4925/ イチローとアクムの過去話 |
□投稿者/ 緋龍 -86回-(2012/10/21(Sun) 14:14:34) |
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皆さんこんにちは!緋龍です! 今回は『悪の道連れ』で書く予定だったイチローとアクムの過去話でも書きたいと思います! いじめ描写が多数存在しますのでご注意を。
イチロー視点で話が進むので、ギャグなのかシリアスなのかわからなくなりそうですが そこはご容赦くだしあ><;
では早速本編をどうぞ。
ワルモ団小説 #『プロローグ』
――――― おい、あいつか?例の・・・・・
・・・・またか。
―――― ああ、間違いねぇ・・・妖精学校一番の不良の・・・・
そのフレーズはもう聞き飽きた。
最近俺が廊下を歩いていると、必ずすれ違った奴らがこのセリフを吐く。
イチロー「・・・うるせぇなぁ・・・俺は不良じゃねーっての」
「ひっ・・・」
「す、すみません・・・っ!」
言っても無駄だととっくの昔に分かりきっているが、一応忠告した。
こいつらは俺が何か言ったりしたりすると必ず怯えて逃げる。
今回も一目散に逃げていった。
―――― いつからかな・・・
俺の周りに、人が寄ってこなくなったのは。
続く
プロローグが短いのはいつものことです((
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■ 緋龍 (87回/2012/10/21(Sun) 14:20:09/No4926)
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ワルモ団小説 #『遭遇』
ある日の朝。俺はいつも通り学校にきていた。
この頃は別に怯えられてなんかいなくて、普通にダチもいたし、普通に生活していた。
だが。俺が廊下の曲がり角を曲がろうとしていたとき、目に飛び込んできた光景が。
不良A「―――― おら、とっとと金出せや化け物野郎!」
「す、すみません・・・お金、持ってないんです・・・」
不良B「あぁ〜ん?何嘘こいてんだてめぇ!?」
「ほ、本当に持ってないんです・・・許して・・・・」
そこにはなんとまぁ典型的なカツアゲにあっている妖精がいた。
イチロー「うーわー・・・・引くわぁ・・・・」
はっきり言っておく。これはマジで引く。
俺はとりあえず壁に背を向けて、様子を窺う。
これもはっきり言っておくが、このまま見過ごすわけではない。 あの妖精が不良共を自力で振り切れるかどうか。それを試している。 暴力沙汰になって、ピンチになったときに助けてやる。俺はなんて優しいんだ。
俺がそんなことを思っている中、不良共の調子はどんどん上がっていく。
不良A「ホントに、一銭も持ってねぇのかぁ?化け物だったら金くらい簡単に出せるだろ」
「う・・・その、“化け物”って呼ぶのやめてください・・・」
不良B「てめぇみてぇな化け物が妖精なわけねーだろ!妖精学校の中でも成績は上の中! 魔法の腕前もかなりのモンだ!しかも・・・」
「うあっちょっと・・・!!」
俺の立っている位置からはよく分からないが、どうやら不良の一人が チビ(からまれてる妖精のことだ)の髪かなんかを持ち上げたみたいだ。
“化け物”呼びといい、結構ひどいな。
不良B「目の色が片方違う奴が、普通の妖精ってのか!?ハハハハ!! ありえねーだろそんなの!!」
「や、やだ!やめて・・・!離して・・・!!」
――――― 目の色が片方違う?
俺は少し気になって目を凝らす。
チビの左目が、緑色に染まっていた。
イチロー「・・・・!」
もちろんそんな妖精いるわけないとか思っていたから、これは流石に驚いた。
イチロー「生まれ付いての隻眼か・・・・だが・・・・」
理由があまりにも身勝手すぎる。
ちなみに不良共の成績は、下の下以下。それは勉強を怠って招いた結果だ。
チビは見ている限り、何でも努力しそうなタイプだ。頑張ったからこその好成績なのだろう。
それなのに、不良共は無理矢理こじつけて自分の実力不足をチビに押し付けている。
なんと下劣な奴らなのだろう。
俺は、そんな奴らを見ているだけで吐き気がしてきた。
――――― 助けて、やるべきか。
そう考えたとき、勝手に体が動いていた。
続く
不良共の成績<<<<<<<<<<<<<<<〜∞〜<<<<<<<<<<<<<<<<アクム<<<<<<イチロー
だと思っといてくだしあです。
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■ 緋龍 (88回/2012/10/23(Tue) 18:52:56/No4927)
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皆さんどうもです。今回はちょいと長めです。
ワルモ団小説 #『不良を追い払え!!』
不良A「俺達の成績が落ちてんのも、お前の所為なんだよ化け物!!」
不良の一人が、チビ目掛けて拳を振るう。 チビは来る衝撃に備えて、目を瞑った。
イチロー「――――― そこまでだ!!」
がしっ!!と本当に音がしそうなくらい(実際なっていたかもしれん)しっかりと 俺は殴りかかろうとしていた不良の腕を掴む。
不良B「・・・あ?誰だお前?」
イチロー「・・・お前ら、自分の頭の悪さをこいつの所為にしてんじゃねぇよ」
不良B「んだとぉ!?」
不良A「いててててて!!!放せ、放せぇ!!」
俺は不良の腕をがっしりと掴んだまま、チビに背を向けて盾になる。 (言い方がちょっと中二臭いけど許せ)
イチロー「ハッ、お前らがすんげぇ低脳なのは分かったからよ、とっとと失せてくれや。 こいつ怯えてんだろ」
挑発してるのはわざとなんだが、俺のこの喋り方なんとかならんかな。
不良みたいではないか。
不良A「放せって言ってんだろ!!」
イチロー「うおっと」
腕を俺に掴まれていた不良が掴まれていない方の腕をおもいっきし俺にぶん回してきた。
当然俺は避ける。それもスピーディーに。
ぶん回した腕は壁におもいっきし当たり、不良は痛そうにうずくまる。
これは本当に痛そうだな。
そう思って、腕を放す。
不良B「こんにゃろう!!!」
今度はもう一人の不良が、俺に襲い掛かってくる。
おもいっきり蹴った足は当然避けて他の不良と同じように壁にぶち当たる。
ボキッという嫌な音が聞こえ、不良は声にもならないような悲鳴を上げる。
恐らく、足首が逝ってしまったんだろう。
・・・俺何もやってないぞ?避けただけだからな?
謎の罪悪感に包まれながらも、俺は平静を装い、うずくまったままの不良共を見下して、 堂々とした態度で言う。
イチロー「お前ら、本当にこいつが何も努力しないで成績上位いってると思ってんのか? 羨ましがんのは、お前らが本当に死ぬ気で努力して、それでもこいつに届かない ときにしやがれ!」
分かったらとっとと失せろ!!
そう言うと不良共はなんて言っているのかわからんくらい泣き叫びながら足を 引きずったり、引け腰になりながら一目散に逃げていった。
不良共が逃げた後、俺は後ろでぺたんと座り込んでるチビに声をかける。
イチロー「おい。お前大丈夫か?」
「あ・・・ありがとうございます・・・・」
チビは立ち上がりながら、少し乱れた服を直す。
・・・・ん?
イチロー「お前、よく見ると男じゃねぇか。何でなすがままだったんだよ?男ならガツンと やってやれ」
髪が長いから分からなかったのだが、チビはどうやら男だったようだ。
女だったらここで恋愛ドラマみたいなロマンスが繰り広げられていただろうに・・・ となんでもない忘れてくれ諸君。
チビは乱れた服や髪を直しながら(その仕草は女っぽいんだけどな)、ポツリと呟く。
「・・・俺、喧嘩弱いし・・・力もないから・・・口でも、言い負かされちゃうし・・・ はは、情けないですよね・・・」
俺はそれを聞いて、思ったことを正直に述べる。
イチロー「・・・情けなくはねぇんじゃねぇの?」
「・・・へ?」
何で、と訊き返しそうな感じのチビを見ながら、俺は言葉を続けた。
イチロー「だって、逃げてなかったじゃねーか、その物事から。立ち向かってただけ いいと思うけどなぁ、俺は」
これは決して世辞とかではない。本当に、心の底から思った言葉だった。
「・・・・ありがとうございます。ちょっとだけ、勇気でたかも」
イチロー「それはよかったな。それでお前、名前はなんてんだ?」
「あ・・・アクム、です・・・・」
イチロー「アクムか。よし、覚えた。俺はイチローってんだ。」
アクム「い、イチロー・・・先輩?で、いいんですかね?」
イチロー「・・・あー、先輩っていう単語を抜かしたらOK」
アクム「はは、分かりました。イチさん」
イチロー「・・・・“イチさん”ってのも妙な感じだが・・・まぁいいや。 それでさ、アクム。いじめられてることセンコーに相談したか?」
俺はアクムと少し話してから、本題を切り出す。
アクム「・・・あ、昔は相談してたんですけど、先生達、何もしてくれなくて・・・ それで自分で解決しようと思ってたんですけど・・・ご覧の通り、いつも負けてます」
うわぁ、センコー使えねぇ・・・・
何かしてやれよ生徒が頼んでんだから・・・・・
俺は何も行動に起こさないセンコーに嫌悪感を抱きながらも、唯一俺が一目置いている あのセンコーの顔を思い出す。
イチロー「う〜ん、深刻だな・・・・・・あ、そうだエンマのジジイには相談したか?」
アクム「え、エンマ・・・て、あのエンマ先生ですか?・・・・・いえ、あの方にはまだ・・・・」
――――― よし。突破口が見えてきたぞ。
イチロー「あのジジイは他のセンコーより使えるはずだから、まずはエンマのジジイに 相談してみろ!サムイギャグはスルーの方針で!な!」
アクム「わ、わかりましたけど・・・先生物じゃないですし、目上の方に“ジジイ”は マズイんじゃ・・・」
イチロー「皆エンマのこと“ジジイ”って呼んでるけどな。アクムは優しいなー」
よし。そうと決まったら早速相談しに行かなきゃな!
俺とアクムは、長い廊下を歩いていった。
続く
この頃のエンマ先生はイチローのクラスの担任ってことで。
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■ 緋龍 (89回/2012/10/26(Fri) 18:42:37/No4928)
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皆さんこんにちは!緋龍です!早速本編どうぞ〜!
ワルモ団小説 #『相談者』
イチロー「―――― とりあえずエンマに言ったからまぁ大丈夫だろ」
アクム「・・・ど、どうも、です・・・・・」
俺達はエンマに相談し、“とりあえず”今回はこれで終わらせる。
イチロー「いやーしかしあんなジジイが俺んとこのクラスの担任なんだからなー、笑わせるぜ」
アクム「あはは・・・」
アクムの顔が心なしか青白い。
まぁ、エンマのダジャレにつき合わされれば誰だってサムイよな。
それは置いといて、今回のカツアゲの一件は知らせたし、あいつらも直接的な 暴力などはふるわなくなるだろう。
でも、まだ油断しちゃいけない。しばらくは俺がついててやるかな。
そう思ったとき、聞き覚えのある声が聞こえた。
「―――― あーー!!こんなところにいた!!」
イチロー「お、イルル」
振り返ると、遠くからイルルが走ってきてるのが見えた。
イルル「全くもう、授業始まっちゃってるわよ!?アンタただえさえ授業さぼってんだから、 今日くらいキチンと受けなさいよね!!」
イチロー「あーはいはいはいはい」
あーもう。イルルの説教なんか聞き飽きたっつーの。
イルル「アンタ勉強なんて全然してないくせに成績いいのがムカツクのよ・・・・てあら?この子は?」
イチロー「喧嘩売ってんのか?・・・こいつはさっきカツアゲに遭っててな、俺が助けた」
アクム「初めまして、アクムです。」
アクムはペコリとお辞儀をする。
礼儀正しいんだな。
イルル「アクムくんかぁ、アタシはイルルっていうの。よろしくね!」
アクム「よろしくお願いします。・・・えと、お二人はどういうご関係で・・・?」
アクムはもう一度お辞儀をした後、俺とイルルを交互に見ながら、ありきたりな質問をしてくる。
イチロー「ガキん時からの付き合いだよ」
イルル「ん、まぁ俗に言う幼馴染って奴よね〜」
素直に質問に答えると、アクムは「そうなんですか〜」とのんびりした口調で納得する。
イルル「ていうか、こいつが後輩くんを助けるっていうシチュエーションが思いつかないわ・・・ う、吐き気してきた」 イチロー「あぁ!?どういう意味だてめぇ!!」 イルル「そのまんまの意味よ。あ、アクムくん!イチロー意外と放任主義でね、 飽きるとほっぽってどっか行っちゃうの。だからまたいじめられたらこいつにじゃなくて、 アタシに相談してね!」 イチロー「え、ちょ・・・はぁ!?」 いきなりなんてこと言い出すんだこいつは・・・!!!?
確かに少し飽きっぽいが、そんな無責任なことしねーよ!!
アクム「ははは・・・(汗)」
おいこらアクム!!てめぇ何笑ってやり過ごしてんだよ!! 何か言えよ何か!!!! (例:「そんなことないですよ。イチさんは勇敢でカッコイイお方です(微笑)」とか!!)
それに、イルルとアクムのツーショットって・・・・
なんかムカツク!!!
イチロー「イルルの方はな、嫌味ばっかり言うし性格もちょっとSっ気あるし! 顔はいいけど性格に難ありって奴!こんな奴に関わるモンじゃないぞアクム!!」
イルル「なっ・・・!!なによそれぇ!!アンタ私のことそんな風に思ってたの!?」
イチロー「お前は黙ってりゃ可愛いんだよ!!性格が残念なのが残念だな!」
イルル「・・・・!!!////」
俺が意地になってそう言うと、何故かイルルは顔を真っ赤にする。
しまいには何か言葉がしどろもどろになって、何言ってるのか分からなくなった。
熱でもあるのか?
アクムは何でだかニコニコしてやがる。何だ?そんな微笑ましい光景か?
アクム「――――― あ、そうだ授業!!」
突然アクムが大きな声を出したもんだから、俺とイルルの喧嘩の波が収まった。
イルル「・・・あ!!もうこんな時間!?行くわよイチロー!2時限目が始まっちゃう!」
イチロー「あぁ〜?めんどくせーなぁ・・・」
イルル「そんなこと言わない!ホラ行くよ!!」
イルルは切羽詰まった感じで(実際詰まっていたのだろう)、俺の腕を掴む。
こうなったら大人しく従うのが吉で、俺は若干呆れた風に「分かった分かった」とか 言いながら教室に向かう。
どうやらアクムも教室に向かったみたいだった。
俺は面倒だと思いながら、2時限目の授業を受けることにした。
続く。
今回はイルルちゃん登場させました。 いやー、楽しかった(笑) イチ様とイルル喧嘩させるの楽しいなぁ〜♪(なんなんだお前)
イルルちゃんがなんで顔を赤くしたのか、皆さんお分かりでしょうか? ちなみにイチロー気づいていません。ヒントはイチローの言動の中にあります。 若干イチイルっぽくしてしまった・・・^^;
まぁこの頃のお二人は、無意識に惹かれ合っているんですぜ。 (イチ様本人は、家族愛に近いものだと思っていますが、果たして・・・?)
ではではこの辺で! |
■ 緋龍 (90回/2012/10/30(Tue) 18:27:21/No4932)
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皆さんどうも!緋龍です!早速本編をどうぞ!
ワルモ団小説 #『閉じ込められた二人』
時間が経って、昼休み。
俺はイルルとダチ数人(男2人、女1人)で、中庭(があるのかどうかはスルーして)で 昼飯を食っていた。
木陰に腰を下ろしたまま、背伸びをする。
イチロー「〜〜〜〜っぁあ、やっぱ背伸びすると気持ちいいなぁ〜♪」
女1「この前ウチの父さん、背伸びしてギックリ腰しちゃってたよ〜!グキッ っていう音が聞こえたのww」
男1「ぶっは、マジで!?ww」
男2「ギックリ腰のつらさは、エンマ先生なら分かるんじゃない?w」
イルル「ああ、エンマ先生ギックリ腰だって言ってたわね〜」
そんな他愛のない話をしていたら、俺の視界の隅に、影が映った。
イルル「・・・・あ、ねぇイチロー、あれってアクムくんじゃない?」
イチロー「あん・・・?」
よく見ると、中庭で一人、アクムが歩いていた。
アクムは俺とイルルの視線に気づかないまま、校舎の角を曲がる。
あいつ、一人で何を ――――――― ?
あっちは確か、人気(ひとけ)のない体育倉庫があるはず。
アクムの学年は今日、体育なんてやらないはずなのに。
イルル「・・・・イチロー」
イチロー「・・・・・・・・・。」
何か、嫌な予感がする―――――――
イチロー「・・・・ワリ、俺ちょっと用事がある」
男1「お?そうなんか」
男2「じゃあその食べかけのパンどうすんだよ」
イチロー「え?あぁ、どうしようかな・・・・」
女1「あ、私欲しい〜w」
イチロー「は?いやでもこれ、食べかけだぞ」
女1「イチくんのだったら食べかけでも食べる〜v」
イチロー「へ?あぁ、そう・・・じゃあやる」
女1「わ〜い、イチくんありがと〜vv」
イルル「・・・・・・。」(いいなぁ・・・・)
そんなやりとりもあったが、俺は急いでアクムが行ったところへ向かう。
イチロー「―――― う〜ん、確かこの辺曲がったんだよな」
校舎の角を曲がり、体育倉庫まで走ってきた。
が、人気(ひとけ)が全くない。感じられない。
イチロー「ったくアクムの野郎、どこ行ったんだよ・・・・」
この先は行き止まりなのだ。必ずこのあたりにいるはず。
イチロー「・・・・てことは、やっぱりここしかないわけだ」
俺は、目の前の体育倉庫を見やる。
ガラッ!!!
俺は思いっきりドアを開ける。
アクム「・・・あ、せんぱ・・・イチさん」
そこには思ったとおり、アクムがいた。
イチロー「やっぱりいたか。こんなところで何やってんだよ、行くぞ」
俺はアクムの腕を掴み、倉庫から出ようとする。
―――――― が、しかし。
ガシャァアン!!
イチロー「!?」
アクム「え!?」
突然、倉庫の扉が閉まった。
しかも鍵をかける音が聞こえる。
しまった、嵌められたか ――――― !!
足音からすると、相手は複数。
ということは ―――――― !
イチロー「今朝の、奴らか・・・!」
アクム「ど、どうしましょう、先輩・・・!」
イチロー「だから“先輩”呼びはやめろって。う〜ん、魔法で開けてみるか」
アクム「え、ちょっと待っ・・・」
そう言うと俺は早速三味線を出し、魔法をかけた。
しかし、バチン!!と派手な音を立ててはじき返されてしまう。
イチロー「くそ、どうなってやがる!」
アクム「イチさん・・・」
イチロー「おいアクム、お前も魔法使え!」
アクム「えっ・・・」
イチロー「どうした?」
アクム「え、えと・・・・・・俺、何故か魔法使えないんです!」
イチロー「何!?」
いきなりアクムは、とんでもないことを言い出す。
イチロー「冗談言うな!魔法が使えない妖精なんているもんか!」
アクム「い、いや、そういう意味じゃなくて・・・ここ“だけ”楽器が出ないんです!」
体育倉庫だけ魔法が使えない!?
どういうことだ!?
イチロー「そんなこと・・・・俺の楽器は出たじゃねぇか!お前も見たろ!?」
アクム「・・・俺の楽器だけ、出ないってことなんでしょうか・・・それとも、 あなたが異質なのか・・・」
イチロー「知るかんなもん!!それに俺を物珍しい目で見んな!」
信じられない。封印魔法なんて高度な技術、奴らはできるわけないのに――――!!
イチロー「・・・はぁ。それに、何でアクムはこんなところにいたんだよ?」
俺はため息を吐いて、ずっと疑問に思っていたことをアクムに訊く。 アクム「・・・俺、さっき奴らに呼び出されて・・・ただ一言、 『体育倉庫の中で待ってろ』と・・・」
イチロー「・・・・?変だな、俺が来たときはあいつらいなかったぜ?」
どこかに隠れていたのか?
俺がそう言ったとたん、アクムは驚いた目で俺を見る。
きっと、俺が来る直前までアクムの周りにいたんだろう。奴らの狙いは、俺とアクムを “ここ”に閉じ込めることだったらしい。
イチロー「まぁ、ともかくここから出なきゃだな・・・魔法が効かないってことは、 何かで壊すしかねぇな」
閉じ込められたのが体育倉庫でよかった。ここなら硬くて頑丈な道具がいくつもある。
まさに、不幸中の幸いって奴だ。
イチロー「ほれアクム。手伝え」
アクム「あ、はい・・・」
俺とアクムは協力して、ドアを機材でぶん殴る。
4,5回ぐらい機材で殴ってたら、ドアが壊れた。
意外と疲れた・・・・もうしばらく力使いたくねぇ・・・・。
イチロー「ふう、出られたな・・・アクム、大丈夫だろうな?」
アクム「はい、大丈夫です・・・」
まったく、懲りない連中だな・・・・
エンマに注意されたんじゃなかったのか・・・?
ドアはへしゃげて、原型すら留めていない。
少しやりすぎたかな・・・・
緊急事態だったとはいえ、学校のものを壊してしまったのだから、センコー共に どやされるんだろう。
俺はダチを待たせていることもあって、アクムと一緒に中庭に行った。
続く
私は何が言いたいのやら。 |
■ 緋龍 (91回/2012/11/04(Sun) 20:38:01/No4934)
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皆さんこんばんは!緋龍です!早速本編をどうぞ!
ワルモ団小説 #『封印された魔物』
――――― あの事件からというもの、あいつら不良達は何かと俺とアクムに 絡んでくるようになった。
直接、分かりやすいように行動してくるわけじゃないから、確信が持てないが。
それでも、俺の目を盗んでは毎回アクムを呼び出しては殴る蹴るの暴行を繰り返していた。
しかも、服で隠れて見えないところを集中的に。
どこまでいっても見下げた奴らだ。一発シメてやろうか。
でもやはり、それで更にアクムを苦しめるかもしれないと思うと、こっちからも 大胆な行動ができないでいた。
あれから数日経った、ある日の朝。
俺は偶然にも、あの不良達と鉢合わせた。
その時はアクムやイルル達と一緒じゃなかったから、俺一人だ。
不良A「へへへ、この間はどうも」
イチロー「・・・・随分懐かしく感じるな。いや、お前らがわざと俺と鉢合わせ しないようにしてた、てことか?」
不良B「さすが妖精学校一の成績トップ優等生。察しがいいな」
イチロー「お前らは妖精学校一・・・いや、妖精界一頭が悪いがな」
不良B「・・・なんだと?」
俺がそう言うと、不良の一人が挑発に乗って身を乗り出す。
不良A「やめとけ、また足首折られるぞ?」
不良B「・・・けっ 確かに、命は惜しいよな」
イチロー「・・・ふん、前よりかは随分慎重だな」
意外に奴らも学習する頭を持っていたのだな・・・これは驚いた。
イチロー「だが、勝手に勘違いすんなよ?俺が足首折ったんじゃなくて、お前らが 勝手に自滅しただけだろうが」
不良A「ええい、黙れ!!」
不良B「それ以上言うと今度こそ殴るぞ!!」
イチロー「ほお、やれるものならやってみろ」
俺が挑発すると、予想通りの反応で襲い掛かってくる。
朝から元気だなぁ、こいつら。
不良A「おらぁ!!!」
イチロー「よっ」
場所が廊下だからそう広いはずもなく、俺が前にやったみたいに壁を背にして立ち、 不良の一人が振りかざした拳を避ける。
すると予想通り、前みたいに拳を壁にぶつけ、獣のような声を上げながら悶絶する。
不良B「こんちくしょう・・・よくもAをぉ!!」
イチロー「いや、こいつが勝手に自滅しただけだろ」
俺のそんなツッコミもおとなしく聞いてる訳はなく、残った二人目が俺に跳び蹴りを 喰らわせようとジャンプする。
不良B「俺様の渾身の跳び蹴りを・・・・喰らえぇーーー!!!!」
もちろん喰らうわけではなく、すばやく横にずれて回避する。
俺の後ろは、コンクリートで出来た硬い壁。
そんなところに奴のいう渾身の跳び蹴りを喰らわせたら・・・・どうなるか分かるよな?
ゴキリッ
不良B「○△□×(´・ω・`)◇(ノД`;)●〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!!」
もはや声にもならず、途中意味のない変な顔文字も含めながら両足を押させてぶっ倒れる。
なんか魚みたいな跳ね方をして、痛みに耐えようとする。
イチロー「なんかお前ら必死だな」
不良A「う、うるせぇ!!」
不良B「〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!」(まだ痛みと格闘中)
俺が平然と立っていることが気に喰わないのかなんなのか、不良の一人は怪我した拳を 押さえながら必死に(少なくとも俺にはそう見えた)俺に食って掛かる。
不良A「君の可愛い後輩君がどうなってもいいのか!?」
イチロー「・・・・何?どういう意味だ?」
予想通りの反応が返ってきて面白いのか、不良はニヤリと笑う。
不良A「へへっ・・・・お前に会う前にあいつを『魔の封印洞窟』に呼び出しておいた。 たとえお前が今から助けに行っても無駄だぜ?」
イチロー「!!」
何・・・・!!?
確か、あの洞窟には―――――!!
不良A「“魔物”が潜んでるらしいなぁ・・・あそこは古代から忌み嫌われてきた “黒魔法”の源の根源が眠る場所・・・」
俺の表情が強張ったのを見て、心の底から楽しそうに笑う。
不良A「“魔物”は眠りから醒めるべく『生贄』が来るのを待っている・・・ そんなところに妖精一匹迷い込んだら、“魔物”はどうするのかなぁ・・・?」
“魔物”は、確か歴史の教科書で見たことがある。
『古代より、闇の魔法“暗黒魔法”と悪の魔法“黒魔法”の根源と言われる、脅威なる邪悪な魔物。』
ガイア族に封印された、2つの内の一つ。
しかし封印を解除されるのを恐れた為、“魔物”を封印した場所は記されてなかった。
・・・なのに・・・・・・・。
イチロー「お前・・・何故知ってる・・・!?」
不良A「さぁね〜♪それより・・・・・後輩君を助けにいかなくていいのかぁ?」
そうだ!!
今ははぐらかされたことに腹を立ててる場合じゃない!!
一刻も早くアクムを助けないと!!!
イチロー「おいてめぇ!!その洞窟はどこにある!?正直に、正確に答えろ!!」
不良A「さぁてね。自分で探してみたらいいじゃねぇか。 ま、探し出すのに相当時間かかるだろうけど」
その返答を聞いて、俺の中で何か切れた音がした。
ゴッッッッ!!!!!!!!!
不良A「うぐっっ!!?・・・・え゛ぇ゛・・・!!???」
俺はとうとう、不良の腹を本気で殴った。
不良の体は“く”の字に折れ曲がり、その場で胃に入っていたものを嘔吐する。
もしかすると、内臓を潰してしまったかもしれない。
しかし今は、不良の心配をしている場合じゃない。
イチロー「言え!!!!アクムがいる場所を教えろ!!!」
続く。
中途半端ですが一端切るデス。
イチ様がすっごい危ない人になっとるがな(ノД`;)
もうホントにギャグなのかシリアスなのか。
キャラ崩壊と設定大幅改造申し訳ないっす((
これが『悪の道連れ』でイチ様が言ってた「あの日」に繋がる というわけですな。(←本当にそうなのか・・・?)
後半は『悪の道連れ』とシンクロするところもあるカモデスよ。 |
■ 緋龍 (92回/2012/11/13(Tue) 12:26:48/No4941)
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皆さんこんにちは!緋龍です!早速本編をどうぞ!今回はアクム視点です。
ワルモ団小説 #『悪の力(アクム視点)』
また奴らに呼び出された。
『ハイルナノ森にある、○○番地まで来い。来なかったらお前の憧れの先輩が ピンチになるかもな。』
そんな感じの内容の手紙で、呼び出された。
こういう感じの呼び出しは前にもよくあったし、行っても大概ろくなことなかったから 無視すればいいのだけど、 あいつらが俺の憧れの先輩・・・イチロー先輩に 何かするんじゃないかと思うと、いても立ってもいられなかった。
アクム「えーと・・・ハイルナノ森の○○番地って確かここ・・・・だよね」
目の前には、禍々しいという表現がぴったり合いそうな、威圧感のある洞窟があった。
柵がしてあって、札に妖精文字で“立ち入り厳禁”と書かれてある。
アクム「・・・これ、いかにも何かありそうだな・・・・」
まぁ、ハイルナノ森にある洞窟なのだから、ろくなのはいないだろう。
・・・そういえば前、先輩に黒魔法の歴史について聞いたことあるような・・・
古くから忌み嫌われている、悪の魂が入れられている、穢れた魔法だと。
でも先輩、「ちょっとわくわくするよな」って言って目がギラギラしてたような気も・・・・。
あの時の先輩、ちょっと怖かったな・・・いろんな意味で。
・・・と、こんなトコでボーっと突っ立ってる場合じゃないや。あいつらが来る気配もないし、 さっさとココから離れよう。
それにココ・・・・不気味な感じがするし・・・・・
『ほう・・・・・・我の気配に気づいたか』
アクム「!?」
声が聞こえる!?
一体何処から・・・!!!
『さらに声まで聞こえるのか・・・・これはいい“生贄”だな』
アクム「い、生贄・・・って・・・!!!?」
そこでようやく、俺は声の主が洞窟の中にいると分かった。
警戒して、いつでも魔法が使えるように構える。
『・・・言っておくが、魔法は使えないぞ』
アクム「・・・え!?」
何だって・・・!!
『我の力は強大すぎるのでな。そこらへんの魔法パワーなんぞに負けはせん』
つまり、力をねじ伏せられているということか・・・!?
『最近、今まで以上に力の増大を感じてな。洞窟の外に漏れ出したりしてしまっていたが・・・』
外に・・・・!?
待てよ、この間俺と先輩が閉じ込められた時、楽器が出なかった・・・
このハイルナノ森は妖精学校にある体育倉庫からはわりと近い位置にある・・・!
アクム「どうりで楽器が出なかったのか・・・」
でもあの時、先輩は普通に楽器が使えていたな・・・どういうことだ?
『ほう、まだそれほどの妖精もいたのだな』
アクム「っへ!?」
『貴様以上の逸材なのだろうな、その“先輩”と言う奴は。是非、捕り込んでみたいものだ』
アクム「な・・・!だ、ダメ!!絶対ダメ!!!」
心を読まれた挙句先輩を捕り込むなんて言いやがった・・・!
冗談じゃないぞ!先輩は俺にとっては必要なんだ!いなくなったら困る!!
『そうか、ではお前から先に捕り込んでやるとしよう』
ゴオォッッッ・・・・!!!!
洞窟から、強い風が吹いた。
アクム「うぅあっっ!!?な、なんだ・・・!」
すごい風・・・!気を抜いたら吹き飛ばされそうだ・・・!!
『さあ・・・来い・・・・・』
あれ・・・・?
声、が・・・・・
風が、止んだ気がした。
『我の元へ・・・・・・来い』
声、が、きこえる・・・・・・・
『さあ・・・・・我の力に・・・・』
それ、だけ、しか、きこ、えない。
『さあ・・・・・・・・・・・・・・・』
あし、 が、 かっ、 てに、 うご、 く。
『来い・・・・・・』
いか・・・・・なきゃ・・・・・・
はや・・・・く・・・・大魔王様の、とこ、ろへ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
続く
無駄に改行がありますが、仕様なのです><
とうとうアクムくん、“魔物”に乗っ取られてしまいました^^;
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■ 緋龍 (93回/2012/11/17(Sat) 18:35:00/No4952)
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皆さんこんばんは!緋龍です!早速本編をどうぞ!かなり短いですが。。。
ワルモ団小説 #『悪の力(イチロー視点)』
――――――― 俺は、全速力で走る。
とにかく、走る。
一刻でも、速く、早く。
あの死にかけな(俺の所為だが)不良から聞いた場所は、ハイルナノ森の奥にある○○番地。
そこにある洞窟に、アクムを呼びつけたらしい。
早くアクムを連れ戻さないと、“ヤツ”が復活しちまう・・・!
イチロー「――― くそっ、あいつどこ行きやがった・・・!!」
とっくにハイルナノ森に入っている俺は、アクムを必死に探す。
しかし、なかなか見つからない。
イチロー「・・・・まずいぞ」
空が暗くなり始めた。
このまま見つからなかったら、この森で一夜明かすことになるし、それに何より、 アクムの身が危ない。
俺はあたり一面に覆い茂る邪魔な雑草を退けながら、まっすぐに進んでいく。
すると、急に視界が開けた。
目の前には、例の洞窟。
そこから、禍々しい空気が流れ込んでくる。
イチロー「この洞窟の中か・・・・・待ってろよアクム」
俺は真っ先に洞窟の中に入っていった。
続く
アクムが魔物に乗っ取られた頃、イチローは必死に探してましたとさ。 すこぶる短くてサーセンorz
・・・ちょっとばかしgdgdんなってきたぞ。。。 |
■ 緋龍 (94回/2012/12/09(Sun) 13:49:05/No5001)
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皆さんこんにちは!久し振りの更新となります緋龍です。 いよいよこの物語も終盤に差し掛かってきました。
それと、今回流血表現あるんでご注意!!!!
ワルモ団小説 #『後悔と絶望と死を』
洞窟の中に入ると、明かりはないはずなのにほんのり明るかった。
イチロー「おーいアクムー!!何処にいるんだ返事しろー!!」
俺はココがあの“魔物”の寝床だと知っていても、構わず大声でアクムを呼び続ける。
少々小走りで歩いていると、突然声が聞こえた。
『ようこそ・・・・・我が城へ』
イチロー「! てめぇがあの“魔物”か!アクムはどこだ!さっさと返せ!!」
『・・・ほう、我が“魔物”と知っても逃げはせず立ち向かってくるとはな・・・ 恐ろしくはないのか?』
イチロー「ハッ、てめぇが“魔物”だからってビビっててもアクムを助けられねぇしな! アクムいるんだろ!さっさと出せよ!!」
俺がいる位置では、“魔物”の声だけしか聞こえない。
少々勇気はいるが、思い切って洞窟の一番奥まで走っていく。
すると、奥はとても広くなっていて、ド真ん中にやたらとでかい水晶のような透明な 石が立っていた。
周りには、いくつもの強力な“封印魔法”の魔法陣が並べられていた。
イチロー「・・・・なんだ、ここは・・・・・・・」
『我の寝床だ。まぁ、最初は身動き一つとれんかったかがな』
水晶に、影が映る。
こいつが例の“魔物”か・・・・・・
『でもこの封印も、大昔にかけられたもので、今はもう随分と弱まっている。 ・・・あとひとつ、あとひとつが足りないのだ』
水晶の後ろから、すっ・・・と影が出てくる。
その人物は―――――――
イチロー「・・・・・・・アク、ム?」
もう生気の欠片もない、真っ黒なマントを羽織った、アクムだった。
『我のエネルギー源は生贄の魂。生き物ならなんでもいい。花やら、動物やら、 妖精やら。それらのものから生気を奪い取り、力とする。我はそうやって、ガイア族に消滅されずにすんだのだ』
ということは・・・・・・
イチロー「・・・・・アクムを“生贄”にした、と?」
『そうだ。あやつは“生贄”の中でも美味だったな』
“生贄”にしたということは、“死んだ”ということ。
ふざけんな・・・・・・・・・・・・・・・・・
イチロー「ふざけんなああああああああああああああああ!!!!!!!!」
復活する為だけに、よりにもよってアクムを・・・・!!!!!
ふざけんな ふざけんな ふざけんな ふざけんな ふざけんな ふざけんな ふざけんな ふざけんな ふざけんな ふざけんな ふざけんな ふざけんな!!!!
イチロー「絶対許さねぇ!!!お前を消滅させてやる!!」
俺は楽器を取り出し、魔法を唱える。
鋭い鋭利な剣で、水晶ごと“魔物”を木っ端微塵にしてやろうと、思いっきり投げる。
『・・・・ふん』
しかし、剣は水晶のちょっと前でピタッっと止まり、向きを変え、今度は俺に 向かって飛んできた。
ちっ、物を操れるのか・・・・!!!
不意打ちだったが、なんとか避けられた。
『我のもう一つのエネルギー源は“絶望”だ。思う存分絶望し、嘆き、怒り、 泣きわめるがいい。そしてさらにお前の“死”が加われば、我は完全復活を遂げるのだ!!』
“魔物”は高らかに笑う。
イチロー「くそ!!!」
俺は立て続けに、魔法をかける。
しかし、“魔物”は俺の放った魔法を消す。
それこそいともたやすく、簡単に。水晶に触れるよりも前に。
イチロー「おいアクム!!何そこで突っ立ってんだ!!お前も手伝え!アクム!!!」
魔法を駆使して攻撃している間も、水晶の隣に立ったままのアクムを呼ぶ。
――――― 無駄だと分かっている。いくら声をかけても、応答してこないくらい。
これからも一切、一生、返事をしてくれないことくらい。
だけど、それでも。
俺は、どこかでアクムが返事をしてくれることを期待していた ――――――
『・・・ふん、しぶとい奴め。仕方がない、アクムよ。お前の“先輩”とやらを こらしめてやれ。殺しても構わん』
アクム「・・・・分かりました、魔王様」
イチロー「・・・っ!?アクム!!」
やっと声が聞けた、と思ったのもつかの間。
俺への返事ではなく、“魔王”へ返事した、忠誠とも感じられる機械的な声だった。
アクム「―――― 徹底排除」
アクムがそう呟き、地面を蹴ったと思ったときには、俺は壁に叩きつけられていた。
イチロー「うっ・・・くぅ・・・!!」
とたん、背中に激痛が走る。
強い力で叩きつけられたのか・・・・。
アクム「・・・魔王様に危害を加えようなら、俺が排除する」
アクムは俺の前に立ち、あらかさまに敵意を剥き出しにした目で痛みで しゃがみこんでいた俺を見下ろす。 俺はアクムに攻撃されることが信じられず、無様にも泣き叫んだ。
イチロー「・・・! アクム!!目を覚ませ!!アクム!!!」
しかし必死に呼びかけても、アクムは眉一つ動かさない。
それどころか、さらに憎悪を露わにする。
アクム「黙れ。たかが“死に損ない”の分際で。これから本当に、死なせてやろうか・・・?」
『よいぞアクム。もっと、もっと“死に損ない”に絶望を味あわせてやれ!!』
アクム「ふふふ・・・了解しました、魔王様」
目の前に立っているのはもう、アクムではない。
アクムは、殺されたのだ。
不良共に、この“魔物”に・・・・・そして、俺に・・・!!!
絶対に・・・・・許さない。許せない。許したくない。
アクムはいつの間にか持っていた鋭利なナイフを、俺に押し当てる。
いつでも殺せるぞ。という挑発。
実際、少しでも刃を傾けたら、俺は死ぬんだろう。
―――― 逃げる気力が湧かない。
後輩に刃を、絶望を、目の前に突き立てられているのに、今まで感じていた恐怖も、 悲しみも、怒りさえも、急激に冷めていく。
少しばかり、絶望に駆られすぎていたからかもしれない。それが原因なのかは、分からんけど。
アクム「―――― さようなら、イチロー先輩。あなたは俺にとって、最高の先輩“でした”。」
ナイフを握り締めているアクムの手に、力が入った。
俺の首あたりに、痛みも走って、赤い液体が飛び散った。
続く。
怒りに駆られるイチ様。 絶望に駆られるイチ様。 そして自責の念に駆られるイチ様を書くのは、ちょー楽しかった!(((おい
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■ 緋龍 (95回/2012/12/16(Sun) 18:32:00/No5014)
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皆さんこんにちは!緋龍です! 今回でこのお話も最終回です。色々シリアスじみてますがそこはしょうがない><
そして今回も流血表現があるのでご注意^^; では本編をどうぞ^^
ワルモ団小説最終話 #『過去は過去、そして現在へ』
イチロー「・・・・・・っく・・・・・・・」
目の前に、赤い液体が広がる。
キズはそこまで深く抉れてはなかったが、切れた場所が首だから、血がどんどん出てくる。
もう痛いのか、熱いのか分からない。
俺は朦朧とする意識の中、アクムを見上げる。
アクムはとても冷めた目をして、俺を見ていた。
アクム「・・・・まだ息があるのか。本当にしぶといな」
予想以上だ、とアクムは呟いて、止めをさそうとナイフを振りかざすが。
『そやつは放っておけアクム。止めをさすにしろささないにしろ、じきに死ぬ』
アクム「・・・分かりました、魔王様」
“魔物”が咎めるように言うと、アクムは少々残念そうな顔をして、“魔物”の言葉どおりに従う。
『それより、いよいよ復活の準備が整った。アクムよ、貴様が我の封印を解いてくれれば、 あとは自由に行動してもらって構わんぞ。・・・・それこそ、世界を征服してもな』
アクム「分かりました、魔王様」
イチロー「・・・・・っ!? や、やめろアクムっ!!それだけは・・・!!」
まずい・・・!!封印を解いたら“魔物”が復活してしまう・・・!!!
止めなければ・・・・・・・!!!!
アクムが、どんどん水晶の傍へ歩いていく。
イチロー「・・・っおい!アクムっ・・・やめろ・・・やめろぉ・・・!!」
俺がそう必死に叫んでも、アクムは無視して水晶の前に立つ。
俺は痛む体に鞭を打って、いまだ血が出続けている傷口に手を当てて、立とうとする。
だが、立てない。血を流しすぎて、腕に力が入らないのだ。
やばい・・・・意識がっ・・・・!
これ以上血を出したら、流石にやばい。
アクムは水晶の前に立ち、両手をかざした。
そのとき一瞬、俺に視線をやったのは、気のせいだったのだろうか。
そして、呟いた。
アクム「―――― “封印解除”」
俺が意識を手放す直前、黒い光が放たれた。
イチロー「―――― ・・・・・・!!」
目を開けると一番に飛び込んできたのは、白い天井と、イルルの安堵した顔。
イルル「・・・あ、イチロー!!やっと目が覚めたのね・・・!」
イチロー「・・・・・・・・・・」
死に損なった。そう思ってしまった。本当なら、あの洞窟で息絶えていたはずなのに。
何故、生きてる。
イチロー「・・・・生き、てる・・・?」
イルル「そうよイチロー。アンタは、生きてるの・・・!」
イルルは俺に抱きつき、顔をうずめる。
顔が隠れているから表情は分からないが、それでも“生きていてくれて安心した” という気持ちが伝わってくる。
イチロー「・・・・何で、助かった?」
イルル「先生達が駆けつけて来たからよ。そうじゃなかったらアンタ、今頃お葬式開いているわよ」
アクムに斬られた傷に手を当てる。そこには包帯が幾重にも巻かれていた。
イチロー「・・・・俺は、アクムを止められなかったのか・・・・」
イルル「え?」
俺がココで寝ている時点で、アクムは封印を解いてしまったことがわかる。
イルル「ああ・・・アクムくん、ね・・・・あの子はアンタと一緒に、倒れていたらしいわ・・・・・」
・・・・やはり、か。
アクムは“魔物”に憑かれ、封印を解除し、あげくに殺されたと。
イルル「――― 明日、アクムくんのお葬式、やるみたい・・・・・」
イチロー「・・・分かった。もう何も言わなくていい」
俺は顔を伏せて、辛そうに声を絞り出しているイルルの頭を撫でた。
――――――― “魔物”の封印が解けたことで、妖精界は大パニックだった。
そしてその事件に俺が関与していたこともあって、イルルを除いて周りに人が寄り付かなくなった。
当然、今まで仲がよかったダチも、離れていった。
それと同時に、ありもしない噂を立てられたり、恐れられたり、色々あったけど。
―――――― 今、ここにいるのはあの頃共に馬鹿をやって笑い合っていた“アクム”とは違う。
そう思い直し、イチローは魔法を使おうと体勢をとる。
それを見たアクムは、同じように攻撃態勢をとった。
―――― もう同じような、悲しい悲劇を繰り返さない為に。
容赦なく全力で、根本を叩き潰す為に。
イチローとアクムの闘いが、今、始まったのだ。
終わり
終わり方が中二臭い!!(ノД`;)
最後の最後で『悪の道連れ』とシンクロさせました。 いや〜イチ様が暗い暗いw(((おい
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