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4908/ シュンの旅の今後について質問
□投稿者/ ムラサメ・シュン -210回-(2012/09/22(Sat) 10:02:21)

皆さんこんにちは、ムラサメ・シュンです、
今日は皆さんに質問があり書き込みました。
それはシュンの旅の今後の方針を聞きたくて
書き込みました・・
いまシュンの旅の3部は様々な人の
思惑が混じり合い次の物語に進む
ようになっていますがどの主人公を
ベースに物語をすすめて欲しいですか・・
次の中から教えてくれますか
1・シュウ
(シュウの人としての成長と
ネルガルからの脱却がメイン)
2・レナ
(レナの人間としての成長と
シュウと出会いゼウスからの
脱却がメイン)
3・シュン
(シュンとミルモ達による
 レジスタンスの行動がメイン)
になります。
こんな所です感想を待っています

それでは。


■ ムラサメ・シュン (212回/2012/10/09(Tue) 08:11:19/No4923)

皆さんこんにちは、ムラサメ・シュンです
今日は質問があって書き込みました・・・
今描いているシュンの旅ですが・・・
皆さんの率直な感想を聞きたいです・・
またこういった話がききたい
シュンの旅の登場人物にしばらくの主役は
だれにしたいか教えてください
(例ミルモならミルモをメインにした話がすすんでいきます)
こんな所です多くの答えを待っています

それでは。


■ まみいー (22回/2013/05/01(Wed) 20:48:41/No5265)

こんにちは‼
私もその小説見たんですが、とっても
面白いです!
色々な発想があって、最高ーー!
私はこのお話、大好きです!!
これからも続けてください!

それでは!




5270/ 時の妖精☆物語〜リクエスト(まみいーさん)編〜
□投稿者/ レイラ -52回-(2013/05/02(Thu) 22:51:57)

こんにちは!レイラです!今回はまみいーさんへの
リクエストSSが完成したので投稿しにきました!
今回は初めてガイア族以外のキャラクターが
主役の小説に挑戦させていただきました!
掲示板で受け付けたまみいーさんのご要望により、
今回初めて「時の妖精」のSSを書かせていただきました!
まみいーさん、楽しんでいただければと思います!
しかし、そのまえにいろいろ注意が…。
以下の事がお許しいただければ
是非よろしくおねがいします。

※文章量の都合により、ご要望されたゲストの内
 「主要4人」を削らせていただきました。
 誠に申し訳ありません。
※キャラをイメージする際は「擬人化」で
 イメージする事をおすすめします。
※ストーリーの後半でシリアスな場面がでてきます。
※世界観はゲームがモチーフになっています。
※時間的にはゲームの物語より少し前のイメージです。
※主役は騎士と詩人にさせていただきましたが
 ゲームのような怖がりな騎士はいません。

…いろいろ注意する事が多くてすいません。
それでも内容を気に入っていただければ幸いです。
では、お楽しみください。


■ レイラ (53回/2013/05/03(Fri) 00:58:42/No5271)

メイン:クロロ×ミライ
ゲスト:アンナ、ビケー、アクミ、アロマ

〜騎士と詩人と歌姫と〜

-クロロの谷•クロロの家にて-
「………」
俺の名はクロロ。
妖精界に8人しか存在しない
時を司る「時の妖精」の一人で
「時の騎士」の称号を持つ剣豪だ。
俺は砂とサボテンが広がる砂漠の地
「クロロの谷」に暮らしている。
家にはいつも俺一人…のはずだが、
今現在…不本意にももう一人…
この乾ききった砂地には
あまりにも不似合いな奴がいる…。
「ね〜♪クロロ〜♪この詩、いいと思わな〜い♪」
甲高く軽い声で俺に話しかけてくる
羽根付き帽子と俺とは違うマントを
身に着けた、片目隠しの金髪が
「女のような」顔によく似合う奴…。
「あいにくだがミライ…
 俺に詩の理解を求めても無意味だぞ」
「まぁまぁそう言わずにちょっと見てよ〜♪
 せっかく「僕」が作った詩なんだから〜♪」
「というかお前はいつまでここにいるつもりだ?
 もう用事はとっくに済んだだろ!」
「まぁ、別にいいじゃない♪
 ちょっと退屈してたから
 わざわざコヨミの所まで行って
 あなたに“たいまつ”届けにきただけじゃない♪
 そろそろきらす頃かな〜と思ってね♪」
「少なくともその“退屈凌ぎ”のために
 生まれた“善意”には感謝するが
 だからと言って俺の所で暇潰そうとするな」
「だって暇なんだも〜ん」
この美人な見た目とは裏腹に
何故か軽い「女口調」で話す「男」は
俺と同じ「時の妖精」の一人で
「時の詩人」の称号を持つミライ…。
こいつは元々「クロロの谷」の隣にある
「ミライの入り江」という港町で暮らしている。
この砂とサボテンだらけの地とは対照的な
海の広がった潤しい地で育ったこいつは
本人曰わく、「幼い頃その見た目の良さから
周囲の妖精に熱烈な愛情を受けて育った」せいか
自分の才能に酔いしれる程のナルシストである。
ここだけの話し、こいつは意外にも
元気の良過ぎる「時の巫女」コヨミと
ひねくれ者の「時の魔道士」チックの幼馴染で
2人によるとミライが周囲の人々に
その見た目の良さから評判が良かったのは
どうやら本当の事らしい…。
しかし、黙っていれば美人な見た目も
周囲の甘やかしが構成させてしまった
このナルシストぶりには勝らなかった…。


■ レイラ (54回/2013/05/03(Fri) 12:49:16/No5274)

「あっ!そうそう!この前ね?
 入り江に2人のカップルがきたのよ〜!
 たしか、アンナとビケーっていう
 妖精だったかしら〜?
 アンナって子はとても頭の良さそうな
 女の子だったんだけど〜
 ビケーって奴がなんか妙に
 僕とキャラ被ってたのよね〜!
 なんかちょっと腹立つから〜…」

-ミライの回想-
「わー!綺麗な海ねー!」
「そうだね。まぁボク程じゃないけど」
「もう、ビケーったら…
 あなたがここでデートしようって
 誘ってきたんじゃない」
「そうだよ?でもボクの方が
 美しいのは見えすいた事だろ?
 アンナはボクよりも
 海の方が美しいと思うのかい?」
「そ、それは…ん?」
〜♪…〜♪〜♪…〜♪
「なにかしら?この音楽…?」
「ボクの美しさを讃える曲かな〜?」
「違うと思うけど…あ、あらら?」
「あれ〜?体が勝手に〜?」
-回想終了-

「“あやつりのメロディ”で
 入り江の外まで誘導してやったのよ〜」
「キャラ被っててムカつくからって
 人のデートぶち壊してどうする…」
「あっ!それとね〜その後、
 入り江にアクミが来たのよ〜」
「アクミがっ!!!」
「そうよ〜?それでね〜…」

-ミライ、再び回想-
「おいっ!」
「も〜なによ〜?人がせっかく気持ち良く
 歌ってたのに〜!…ってアクミ?」
「あんた、チックの仲間だろ!」
「ええ、そうだけど?」
「チックの奴、見なかったか?」
「えっ?あなたチック探してるの?」
「そうだ!見てないか?」
「見てないわよ〜?ていうか、
 あなたチックに何の用〜?」
「べっ!別にいいだろ!
 お前にはカンケーない!
 見てないならいいよっ!!!」
「ちょっと〜!聞くだけ聞いて
 お礼の一言もないわけ〜?」
…しばらくして…
「ミ、ミライー!」
「ん?あらチックじゃないの?」
「ちょっ!ちょっと!
 ここにアクミちゃん来なかった!」
「アクミ?あぁそういえば
 あんたの事、探してたわよ?
 人がせっかく気持ち良く歌ってたのに
 聞くだけ聞いてお礼の一言もなく
 どっかいっちゃったわよ〜?
 まったく失礼しちゃうわね〜…
 ………ってチック?聞いてるの?」
「………」“ぷるぷる”
「?」
「うおおおおぉぉぉぉん!!!ごめんね!
 アクミちゃああああぁぁぁぁん!!!」
“バビューーーーーーーーン!!!”
「………あらら…」
-回想終了-

「アクミとなんか大事な用事が
 あったみたいなんだけど〜
 あの様子だとチックが遅刻しちゃって
 2人が僕の所に来た時、
 入れ違いになっちゃったみたいね〜
 その後どうなったかは知らな〜い」
「………哀れだな」


■ レイラ (55回/2013/05/03(Fri) 13:52:38/No5275)

「それでそれで〜♪その次の日にね〜♪」
「まだあるのか…(もう帰ってほしい…)」

-ミライ、またまた回想-
それは「ワッチの修行場」の帰り道…
「もー!ワッチってばあんなに
 怒る事ないじゃない!
 僕はただ高い所で歌いたかっただけなのに〜!
 あーもう!ワッチの石頭っ!!!」
「あの〜?」
「なに?」
「先程、山頂で歌っていた方ですよね?」
「えっ?…えぇ、そうよ?」
「やっぱり…声が似ていたので
 もしかしたらと思ったんです…
 私、アロマといいます。
 あの…そんなに怒ってどうされたのですか?」
「あぁ…たいした事じゃないのよ…
 ワッチっていう石頭な人に
 「騒がしいっ!!!」って怒鳴られて
 そのままケンカになっただけだから…」
「仲直りは…?」
「してないわよ?決まってるでしょ?
 歌の良さがわかんない人に
 謝る気なんてないわ!
 ワッチはいっつも僕の事
 「困り者扱い」するのよ!
 まったく失礼しちゃうわ!」
「あの…私、あなたの歌を聞いていたのですが
 とても素敵でしたよ?」
「えっ?…ホント?」
「はい!ここだったら誰も怒りませんよ?
 是非…続きを聞かせていただいてもいいですか?」
「………いいわよ?」
-回想終了-

「で、歌い終わった後、アロマちゃん
 すっごく褒めてくれたの〜♪
 やっぱり可愛い子に褒められると
 気持ちがいいわよね〜♪
 おかげでイライラしてたのが
 吹っ飛んじゃったわ♪」
「あっそ…(ワッチも大変だな…)」
「え〜っとそれからね〜」
「ミライ」
「あと他に面白い事は〜」
「ミライ…」
「え〜っと〜、何があったかしら〜?」
「ミライ…!」
「あっ!そうだクロロ!さっき作った詩…」
「ミライっ!!!!!」
「っ!…な、なによ?」
俺はまだ話しを続けようとする
ミライの話しを大声で制止した。
そろそろ本気で帰ってもらいたかったからだ。
これでもマイペースな話しに付き合わされて
かなり不満が溜まっていたのだ。
「もう十分話しただろ?
 いい加減帰ったらどうだ?」
「も〜♪堅苦しい事言わないでよ〜?
 僕だって家に一人でいるのは退屈なのよ?
 クロロだって家に一人じゃ退屈でしょ〜?」
「俺はお前とは違う。
 一人でも退屈くらい凌げる。
 というかお前はいつもお気楽に歌って
 余裕あれば女ナンパしているくせに
 こういう時だけ自分の事棚に上げるな。
 とっとと帰れ」
「クロロったら心にもない事いっちゃって〜♪
 僕は別に女性だけに目がない訳じゃないのよ〜?
 男のクロロと一緒にいても楽しいわよ?
 ね?クロロも誰かといると楽しいでしょ?」
ミライはそういって俺の背中に抱きついてきた。
こいつはああいえばこういうで帰らない気だ。
そう確信した瞬間、俺の不満は一気に爆発した。
「いい加減にしろっ!!!!!」
「っ!!!!!」
俺がそう怒鳴ってミライの抱きついた
腕をムリヤリ振り払った。
突然怒鳴りだした俺に驚いたミライは
少し動揺した目で俺を見つめていた。


■ レイラ (56回/2013/05/03(Fri) 19:46:22/No5276)

「俺はお前みたいな自分の事しか
 考えられない奴とは違うんだっ!!!
 さっきからくどくど話されて
 すごく迷惑なんだよっ!!!
 確かに俺だって誰かと一緒にいると楽しいけど
 お前と一緒にいるくらいなら
 一人でいた方がずっとマシだっ!!!!!」
「っ!!!………」
「わかったらさっさと帰れっ!迷惑だっ!!!」
俺は溜まった不満を全て吐き出す勢いで
ミライを怒鳴りつけてやった。
ミライは顔を少しうつむかせて
どこか悲しそうな顔をした。
「………わかったわよ」
ミライは小声でそういうと玄関に
とぼとぼと歩き出した。
出入り口の前まで来るとチラリと俺の方を見た。
「じゃあね…クロロ…」
「いいから早く帰れっ!」
「………うん」
俺がダメ押しするとミライは
とぼとぼと玄関を出ていった。
「………はーっ、やっと帰ったか…」
俺は肩の力を抜いてその場に腰をかけた。
「あそこまで言わないとあいつ
 帰ってくれそうにないからなぁ…」
少しキツかったかなとも思ったが
マイペースなあいつを帰らせるには
あれくらい言ってやった方がいい。
もちろん本心から言ったつもりなんて
さらさらない…。
いくらあいつがナルシストだからといって
「一緒にいたくない」なんて
思った事は一度たりともない。
ある意味人懐っこいあいつには
キツいかもしれないが
あれはあいつを帰らせるための
口実にしかすぎない。
ま、明日になれば忘れるだろう。
あいつは自分に都合の悪い事は
すぐに忘れる性格だ。
「ん?」
不意に後ろを向くと床に一枚の紙が落ちていた。
かなり質の良い羊皮紙だった。
「あいつ…忘れていったのか」
すぐにミライの忘れ物だと気付き近付いてみると
その羊皮紙には何かが書かれていた。
「あいつの詩か…」
何気なく俺はあいつの書いた詩に目を通してみた。
どうせあいつの事が書いてあるんだろうと思った。
あいつはそういう奴だからと…。
「……………!」
俺はひと通り詩をさらっと見て感じた
違和感からもう一度始めから詩を読み返した。
そしてそれを何度も繰り返した。
詩の内容を完全理解した時、
俺の心には罪悪感にも似た感情が疼いていた。
「………ミライ…」
俺は不意にあいつの出ていった玄関を見つめた。
あいつは「これ」を見せようとしていたのか…。
「………追ってやるか」
俺はそう自分に言い聞かせるように呟くと
羊皮紙を懐にしまって玄関を出ていった。
まだ「クロロの谷」を出てはいないはずだから。


■ レイラ (57回/2013/05/03(Fri) 20:28:22/No5277)

-クロロの谷•ミライの入り江に続く道-
「そろそろ追いつくか?」
俺は少し早足で砂漠を進んでいた。
あいつのあの足取りなら追いつけるはずだ。
すると目の前に人影が見えてきた。
「ミライか?」
俺は人影をよく見て、それがミライだと確認した。
しかし…確認できたと同時に違和感を感じた。
「(倒れてる…?)」
少なくともあいつは立っていなかった。
「ミライ…?」
俺はどこか不自然なミライに近付いてみた。
すると、かすかにうめき声が聞こえた…。
「…た………い…」
「?」
わずかだが体は動いていた…。
そして…あいつの姿がはっきり見えた時…
「お………お前…!」
俺は驚きのあまり…絶句してしまった…。
「…たい………イタイ…」
ミライは女のような顔を苦痛に歪め、
小刻みに震えて倒れていた…。
ミライの片手は右足のふくらはぎを抑えていた…。
そしてその足は…赤く染まっていた…。
「イタイ…!痛い…!」
「ミライっ!!!」
俺は倒れているミライに駆け寄って抱き起こした。
「ク…クロ…ロ…?」
ミライは足の痛みでキツく閉じていた目を
少しだけ開いて俺の姿を確認した。
相当痛むのか頬は涙でわずかに濡れていた。
「ど…どうして…?イッ…!」
「どうしたはお前の方だっ!」
「ぼ…僕…い、いきなり…何かが…」
「話しは後で聞く!少し我慢してろ!」
俺はミライの背中から膝の後ろに手をまわし、
ミライを抱えて立ち上がった。
(いわゆる「お○様抱っこ」である)
「いっ!!!…クロロ…っ!痛い…っ!」
「すぐ家に連れていく!それまで耐えろ!」
「痛い…!クロロ…!足…痛い…っ!」
俺はミライを抱えたまま自分の家に引き返した…。
ミライは同じ言葉を呟いて右足の痛みを訴える…。
まさか…あの数分のわずかな時間の中で
こんな事になっていたなんて…!
俺がもう少しこいつの話しを聞いてやって…
もう少しこいつと一緒にいてやったら…
こいつはこんな目にあわなかったのか…!
「あの詩」をちゃんと…
こいつの口から聞いてやれば…!
俺はそんな事を考えていると自分の家についた…。


■ レイラ (58回/2013/05/03(Fri) 21:32:05/No5279)

-クロロの家-
「イタイ…痛い…っ!」
「今手当てしてやる…!じっとしていろ!」
俺はミライを自分の布団に寝かせて
赤く染まっている右足の裾をそっと捲り上げた。
痛みの原因である傷は…
大小それぞれ2つずつの穴が
平行に並んだ4つの斑点だった。
「これは…砂蛇の歯型っ!」
砂蛇とは「クロロの谷」のような
砂漠に生息する蛇の仲間である。
大きさは普通の蛇と何ら変わらず、
気性の大人しい蛇のため、
妖精を襲う事はないはずだが…。
しかし、ミライの右足のふくらはぎには
確かに砂蛇の歯型がくっきりと残っていた…。
「(そういえば…砂蛇は気性は大人しいが
  繁殖期に入るとそれが一変したように
  縄張り意識が強くなるんだったな…)」
砂蛇は今がちょうど繁殖の時期…。
「ミライの入り江」に続く道は
普段からあまり人が通らないから
俺を含めて誰も知らない内にその道に
砂蛇の巣ができていたとしたら…
繁殖期で縄張り意識の強くなった砂蛇が
「クロロの谷」を出るためにその巣の近くを
通りかかったミライを襲ったとしたら…
この歯型の説明がつくな…。
「歩いていたら…!いきなり…!
 足に何か…!刺さったみたいに…!」
ミライは右足の苦痛に興奮しているのか
苦しみながら途切れ途切れにそう答えた。
「大丈夫だ。すぐに手当てしてやる。
 少し痛むかもしれないが我慢してろ。
 だから落ち着け…いいか?」
「…えぇ」
俺はミライに落ち着くように促すと
ミライは少しだけ興奮した心を落ち着け、
俺はすぐに足の手当てに入った…。


■ レイラ (59回/2013/05/04(Sat) 19:10:56/No5280)

「どうだ?少しは楽になったか?」
「えぇ…だいぶ痛みが引いたわ…」
手当てを終えて、痛みに苦しんでいた
ミライはようやく落ち着きを取り戻した。
砂蛇が毒を持たない蛇である事を含めて
よく効く薬を使ったからもう大丈夫だろう。
さっきまで自力で動く事ができなかったミライは
今は仰向けになっていた俺の布団から
自分で上半身を起き上がらせるまでに回復した。
「突然あんな目に遭ってびっくりしただろ?」
「まあね…足が痛くて動けない上に
 周りに人が誰もいなかったから
 どうしようってパニクっちゃったわ…
 でも…クロロが来てくれた時の方が
 もっとびっくりしたけど…」
「お前は帰っても世話焼かすなぁ…」
「あっ、あれは事故でしょ!事故っ!」
少しいじわるな事を言ってからかってやると
ミライは子供のようにムキになってそっぽを向いた。
そんなミライが不意にも可愛く思えた。
…今なら言えるかもしれない。
「ミライ…すまなかったな…」
「えっ?」
「せっかくたいまつ届けてくれたのに
 あんな事言ってムリヤリ追い出して…
 あれは本心じゃないんだ…
 できれば…なかった事にしてくれるか?」
「っ!…………」
俺の言葉を聞いてミライは少し驚いた顔をすると
帽子に目元が隠れるくらい顔をうつむかせた。
「…………ムリ」
「そうか…まぁ…そうだよな…
 あんな事言われたら誰だって…」
「忘れるなんてムリッ!」
「ん?」
いきなり叫んだミライの声が
不意にも震えているように思えた。
そして顔を上げたミライは俺と目を合わせると
その目に涙を溜めていた。
先程の肉体的苦痛による涙とは違う…
まるで好きな相手に嫌われてショックを受けた
子供のように純粋な涙だった…。
「ぼ…僕…!ク…クロロに…あんな事言われて…!
 すっごく…傷付いたんだから…っ!
 クロロが…僕と…!一緒にいたくないなんて…!
 き…!聞きたく…なかったのに…!
 ぼ……僕…っ!…ぼくぅ…っ!」
ミライは溜まった涙を頬にこぼすと
いきなり上半身を布団から乗り出し、
タックルするような勢いで俺に抱きついてきた。
「っ!」
「うわ〜〜〜〜〜〜〜〜ん!!!
 クロロのバカ〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!」
「……………ふぅ…」
俺は子供のように泣き出したミライを抱き返し、
子供を慰めるように頭を撫でてやった。
「わるかった、わるかったって…許してくれよ?」
「ぜ〜〜〜ったい許さないっ!!!
 僕のハートはガラス細工なのよっ!!!
 嘘でもあんな事言われたらショックで
 一生忘れられる訳ないでしょ〜〜〜っ!!!」
「よしよし…もう言わないから泣き止めって…」
「反省してるならせめて怪我治るまで
 面倒見なさいよ〜〜〜っ!!!」
俺はミライを泣き止ませようと
頭を撫でて慰めの言葉をかけるが
ミライに泣き止む様子は見られなかった。
どうしたものかと思っていると
ふと頭の中に妙案が浮かんだ。
俺はその考えを更に詳細化していくと
面白くなって不意に笑みを浮かべてしまう。
そして、俺はそれを実行に移した。
「はいはい、そのつもりですよ?「お姫様」?」
「…!?」
予想通り、ミライは最後の言葉に引っかかって
面白いくらいにぴたりと泣き止んだ。


■ レイラ (60回/2013/05/04(Sat) 21:54:20/No5283)

「なっ!なんでお姫様なのよっ!
 僕は「男」だよっ!」
ミライは泣き止んだ代わりに
少し動揺した表情で俺と顔を合わせ、
俺に質問と反論を同時に返してきた。
「女みたいな顔と喋り方してんだから
 お姫様扱いしたっていいだろ?」
「いっ!いいわけないでしょっ!!!」
ミライは俺の言葉に顔を赤くして反論した。
「たっ!確かに昔はよく女の子と間違われたし
 この喋り方だって少しは自覚あるけど
 僕は女の子扱いされるのが嫌いなのよっ!
 てっ!訂正しなさいよっ!!!」
ミライは先程の泣き顔とは一変して
怒りと恥ずかしさが入り混じったような
赤い顔をして俺を上目遣いで睨み付けていた。
「(まさかここまで応えるとはな…)」
妙案の予想以上の効果に俺は内心驚いたが
もう少しだけ続けてみる事にした。
「お前を「女の子扱い」はしていない。
 俺は「お姫様扱い」しただけだろ?」
「どっちだって一緒でしょ!!!」
「いや、全く違うな」
俺はミライの反応が面白くなって軽く否定して
自分の顔をミライの顔に近付けた。
「ミライ…俺が何なのか知ってるだろ?」
「なっ、なによ…いきなり…」
「俺は「時の騎士」だ…
 騎士とは元々「お姫様」を守る事を
 役目とする者とも考えられている…
 そして俺が守るべきお姫様を
 俺達「時の妖精」の中で務められるのは…
 ミライ…お前だけだ…」
「はぁ!!!なっ!なんでよっ!
 あっ!あんた僕が何なのか忘れたわけっ!
 僕は「時の詩人」よっ!しじんっ!!!」
ミライは俺の言葉に猛反論した。
しかし俺は考えを揺るがさなかった。
「お前…詩人の別名、知ってるか?」
「な、なによ…!」
ミライの返事に俺はニヤリと口を曲げて
ミライを後ろの壁に追い詰める形で
後ろの壁に右手をそっとついた。
この行為にミライはびくりとして俺を見つめた。
そして俺はこう言った…。

「お守りしますよ?「時の歌姫」様?」

「……………………っ!!!!!」
俺がトドメに用意していた言葉を放つと
ミライの顔はみるみるうちに赤くなった。
今にもショートしてしまいそうなくらいに。
「い…いやああああぁぁぁぁ!!!!!」
「うわっ」
ミライは叫び声をあげて俺を突き飛ばした。
「いっ!いやっ!クロロのバカっ!
 いじわるっ!こっち来ないでぇぇぇ!!!」
ミライは俺の言葉攻め(?)に興奮しすぎて
完全に顔を赤らめて涙目にまでなっていた。
「(少しからかいすぎたか…)」
俺は言葉攻めに動揺するミライの反応が面白くて
ついついやりすぎた事に苦笑した。


■ レイラ (61回/2013/05/04(Sat) 23:46:09/No5285)

「なーんてな…冗談だよ、冗談」
「………えっ」
俺はいつもの調子で立ち上がってそう答えると
ミライは態度をコロッと変えた
俺に拍子抜けて声が裏返った。
「お前の反応が面白かったから
 ちょっとからかってみただけだよ」
「…………〜〜〜〜っ!!!!!」
「おっと!」
ミライはまた顔を赤くするが
今度は手元にあった枕を投げるという
おまけ付きだった。
「なっ!なによもうっ!!!
 つい本気にしちゃったじゃないっ!!!
 あんたいつ言葉攻めなんて
 器用なスキルつけたのよっ!!!
 あーーーもうっ!!!
 恥ずかしいったらありゃしないわっ!!!」
ミライは再び怒りと羞恥の入り混じった
感情に興奮して俺を睨み付けた。
「悪かった、悪かったって…そんなに怒るなよ…」
「それこそムリに決まってるでしょっ!!!
 僕のグラスハートどんだけ
 メチャクチャになったと思ってんのっ!!!
 もうっ!!!クロロなんて知らないっ!!!」
ミライはそう言って怪我した右足は
伸ばしたまま左足のみ抱えて疼くまってしまった。
俺はやれやれとため息をついて
ミライに近付いてしゃがみ、頭を撫でてやった。
「ごめんな…?ミライ…?」
「………////」
俺が優しくそう言うとミライは
少し顔を上げてちらりと俺の顔を見た。
「からかった詫びに約束してやるよ…
 お前の怪我が治るまで俺が面倒見てやる…
 だから少し落ち着いてくれ…いいよな?」
「………っ////」
ミライは俺の胸に抱きついてきた。
「?」
「………クロロのいじわる////」
「は?」
「そんなに優しくできるなら
 余計な事しないで接しなさいよっ!」
「…はいはい、意外とデリケートだな…お前は…」
「…////」
俺はそう言ってミライを優しく抱き返した。
今はもう少し…このままでいたかった。
今となってはこいつが来た時、
なんで俺はあんなにもこいつを
帰らせたがっていたのかという
最初の自分の気持ちに対する疑問を抱いていた。
今では「帰ってほしい」なんて気持ちは
微塵も生まれないというのに…。
「(思えるわけないだろ…「あんな詩」を見たら…)」


           〜おしまい〜


■ レイラ (62回/2013/05/05(Sun) 01:51:46/No5286)

〜後書き〜

まみいーさんのご要望により、
初めてガイア族以外のキャラで
SSを書かせていただきました。
まみいーさん、SSリクありがとうございました。
そしてなんかすいませんでした。
クロロがクロロじゃありませんね…。
こんなに他人の扱いが上手くて
言葉攻めまでできるクロロは
公式アニメ&ゲームのどこにもおりません(笑)
そして書いているうちに内容が
どんどん「あっち」寄りになっていって
SS書いている時の自分の思考に
わずかな危険性を感じました( °□°;;)ガクガク
でもぶっちゃけた話し、
クロロ×ミライはミライ×チムルと同じく、
時の妖精を知った当時から考えていて
一切揺るがなかった組み合わせの一つなので
今回初めてクロロ×ミライのSSを書けて
少しだけ嬉しく思っています。
ミライは余裕のある性格な分、
クロロとかワッチに押される設定で
少し困らせてみたい気持ちがありますので
今回はその欲を元に書かせていただきました。
まみいーさん、こんな欲まみれな作品でも
楽しんでいただけたら幸いです。
また何かリクエストがありましたら
お気軽にオーダーしてください。


■ まみいー (28回/2013/05/05(Sun) 10:30:29/No5288)

レイラさんこんにちは!
小説かいてくださって有り難うございます!
レイラさんの小説は元から好きですし
面白いので私は暇があればすぐ見ちゃいます!
レイラさんの小説を見ていたら私のような
ゴミ小説とは大違いです。
レイラさんの小説は上級職人さんがかいた
ような小説です!
才能の欠片もない私のリクエスト
を聞いて下さって本当に有り難うございます!
クロロとミライのお話は小説で
一度も見た事もなかったので
レイラさんのお話で見れて幸せです!
レイラさんの才能の欠片
の一つくらいあればなあ…
私もこんなに上手にかけたらなあ
凄く面白いおはなしでした。
またかいてください!

それでは!有り難うございました。




5242/ 年の差の恋のお題
□投稿者/ 梨璃 -203回-(2013/04/27(Sat) 00:09:35)

皆さんこんばんは★

今回はお題小説に挑戦してみようと思います。
お題は恋したくなるお題 様からお借りしました。

ttp://members2.jcom.home.ne.jp/seiku-hinata/index.html

ラトアロで「年の差の恋のお題」に挑戦してみたいと思います。
混乱を防ぐため短編集とは別に立てます。

また、片思いだったり両想いで付き合ったりしています。





■ 梨璃 (204回/2013/04/28(Sun) 13:27:15/No5248)

01.未経験区域(ラット→アロマ)


「1年…?」
「はい。パピィさんたちの通う学校とは違いますが…。」
喫茶店でアロマとラットは何時ものように話していた。
そこで、いつの間にか年齢の話になっていた。
アロマは年の割には結構しっかりしている。
そこまで変わらないと思っていたが、ラットは自分とは4つ違いであることに驚いた。
アロマは紅茶を一口飲むと会話を進めた。

「そういえばラットさんはご兄弟がいるんですか?」
「妹が一人…。アロマと同じ年だ」
「そうなんですか。ラットさんと似てるんでしょうね。」

妹であるヤマネ、そして弟子の一人であるアマネ。
ラットが話す機会の多かったアロマと同年代の女性はこの2人ぐらいであった。
昔からあまり異性と話すのは苦手であった。
しかし妹でも弟子でもないアロマと話すのは気が楽になっていた。
ただの友人としてか――――――
いや、それ以上の思いもあるのかもしれない。
しかも、相手は年下の小さな女の子。
恋愛なんてまだ無縁だと思っていた。




「未経験な事が多すぎるな。」
「え?」
「いや、なんでもない。」


■ 梨璃 (205回/2013/04/28(Sun) 18:33:47/No5255)

02. 大事にされてるのは分かるけど(アロマ→ラット)
***アロマ視点

今日は近所に話題の喫茶店が開き、ラットさんと一緒に行ってみた。
噂通り、紅茶やコーヒーの種類も豊富で美味しい店だった。
その後は、近くの雑貨屋さんなどを見て回った。


「もう暗くなってきたな。家まで送る。」
5時の時刻を伝える、時計台の鐘が鳴った。
いつもラットさんは私と出かけたときは帰りは家まで送ってくれる。
とても嬉しいけど、まだ一緒にいたい気持ちがある。
我が儘だと言われてもいいから今日思い切って言った。

「もう少し…一緒にいたいです」
顔が赤くなる。ラットさんは少し驚いたような顔をしていた。
「そう言っても、門限あるだろ。親御さん心配するぞ。」
昔から親から厳しく言われていた。最近ラットさんと出かけていることもあまり認めてないらしい。
「そうですよね。ごめんなさい我が儘言って。」
「いいけど、じゃあ帰るぞ。」


帰り道をラットさんと帰っていく。
いつもなら会話をしたりしているけれど、今日は気まずくて一言も話してない。
家の門までいつも送ってくれている。
するとラットさんが口を開いた。
「もう少し大人になったらな。…もう少し見て回ってもいいぞ。」
「いいんですか?」
「まあ、相変わらず厳しかったら難しいかもしれないがな。それじゃあ」
ラットさんは帰っていった。
曲がり角を曲がるまで見ているのが私の癖となっていた。

大事にしてくれてるのは嬉しい。けど子ども扱いなのが辛い。
「そのころにはちゃんと一人の女性として見てくれるかな。」



■ 梨璃 (206回/2013/04/29(Mon) 15:30:26/No5259)

03. 年では大勝、恋は完敗(ラトアロ)
***ラット視点

最近、初めての恋人ができた。
自分より、年下のお嬢様。
ある日の帰り道、彼女から「好きです」と言われて。



今日は付き合い始めてからアロマと出かけるのは初めてで。
アロマが気になっている映画があるというので、その映画を見に行くことにした。
いつも通りに会うと言い聞かせても、自分らしくなく緊張していて。
待ち合わせの時間よりもかなり早くついてしまった。
待ち合わせ30分前にアロマが待ち合わせ場所にやってきた。

「ごめんなさい、私待ち合わせ時間間違えちゃいましたか?」
「いや俺が早く来すぎただけだ。間違ってない。」
「でも待たせちゃいましたね。ごめんなさい。」
「いいって。少し早いけど行くか。」
「はい、そうですね…。」

ぎこちなく映画館に向かう。
映画館につきチケットを購入すると、アロマは売店のポップコーンが気になっているようだ。
「欲しいのか?」
「い、いえ…その…」
「いいよ。買ってくる。あと飲み物も」
「…ありがとうございます。」

売店に並び、購入して戻ってみるとアロマの周りに二人の男。
「一人?何の映画見るの?」
「綺麗だねー。」
「ねえ、せっかくだしオレのおすすめの映画見ない?」

「え、えっと…」
アロマは困った顔をしていた。
急いでアロマを助けようと向かった。

「その、あなたたちとは見に行けません…!」
アロマが男たちに向かっていった。
「なんで?一人なんだし。」
「一人じゃありません…!。好きな人と今日は見に来て…ずっと楽しみにしてたんです。だからあなた方とは行けません」
アロマは男たちに伝えた。
男たちは諦めたのか帰っていった。
「悪い、大丈夫か?」
「ちょっと怖かったけど、もう大丈夫です。」

その後映画を見た後、喫茶店で休憩を取った。

「映画面白かったですね。」
「そうだな…。」
そう言っても映画の内容はあまり覚えてない。
アロマの言葉が気になっていた。
「(好きな人…か)」

帰り道アロマを家まで送る途中アロマは小さくあくびをした。
「疲れたのか?」
「ご、ごめんなさい…。私昨日から眠れてなかったんです。」
アロマは少し恥ずかしそうにうつむいて話している。
「明日会う…って思ったらドキドキして…」

「…もういい、わかったから帰ったら寝ろ…!」
「はい。」

年齢では俺の方が上なのに。
彼女にはかなわない。


■ 梨璃 (207回/2013/04/30(Tue) 21:31:27/No5262)

04. 不釣合いだなんて言わせない(ラトアロ前提ラット+パピィ)


「えええ付き合うことになったの!?」
久々にパピィと会い、アロマはパピィの家に泊まってラットと付き合い始めたことを話した。
「すごいじゃない!おめでとう!」
「ありがとう、パピィちゃん。」
「でもね、心配事があるの。」
「心配事?」
パピィは聞き返した。
「何々!?もしかして浮気とか!?元カノがいるとか!?」
「そ、そういうわけじゃないんだけど…。ないはずよ。元カノもいないって。」
「じゃあ何?」
「実はね…。」








翌日、ラットはある人物に呼び出されていた。
「こっちでちゅ」
呼び出した人物はパピィ。

「アロマたんと付き合うことになったのよね?」
「認めないとでも言うつもりか?」
「違うわよ、アロマたんが幸せそうであたちは嬉しいわ。けど昨日アロマたんから聞いたわ!」
「聞いた?」
「ラットさん、アロマたんと本当に付き合ってるんでちょ。なのに俺でいいのか?って言うなんてどういうことよ!?」
あたりの人物が2人に注目する。
「とりあえず場所を変えるぞ。」



場所を公園のベンチに変え、2人は会話を進める。
「で、結局どういうことよ!?」
「それは、この間一緒に出掛けた時に兄弟とか間違われて…。」
「アロマたんにそのこと聞かれたの?」
「それは気付いてないみたいだけど、その…恋人と思われた時も『あってない』って言われて…」
「もしかしてそれで『俺でいいのか』なんて言ったの!?」
「それに、お嬢様だろ…。もしかしたら俺よりも、他にいいやついるだろ。」
パピィはそれを聞くと呆れたように言った。
「もう!アロマたんはラットさんのことが好きなのよ!ラットさんはどうなの!?」
「どうって…そりゃ、好きだけど。」
ラットは少し恥ずかしそうに答える。
「それならいいじゃない。不釣合いって思われても、あたちは似合ってると思うわよ。だから…」
「わかった。アロマにちゃんと謝る…。」
「それでいいのよ。」
パピィは満足したように笑った。



「それと、アロマたんを泣かせたらしょうちしないからね!」
「了解しました」


■ 梨璃 (208回/2013/05/02(Thu) 13:04:57/No5267)

05. 今のままで十分可愛い(ラトアロ)


「パピィちゃん相談があるんだけどいいかな?」
昼下がり、アロマはパピィの家に遊びに行った。

「どうしたの?相談って。」
「その、お化粧ってしたことある?」
「お化粧?」
アロマの手にはファッション雑誌を数冊手にしている。
「その、こういうモデルさんみたいに綺麗になりたいなって…。」
「アロマたんは今でも十分綺麗よ。」
「ありがとう、でもメイクとかそういうのしたいなあって…。」
「ラットさんのために?」
パピィが悪戯っぽく聞くとアロマは顔を赤くする。
「うん…。」
「やっぱり女の子だもんね、お洒落しなきゃ!でもあたちはお化粧とかよくわからないし…。」
二人で考えた結果、人間界へ行くことにした。
「お化粧ですか?」
向かった先は結木の家。といっても結木ではなくそのパートナーであるリルムに用がある。
「すいません急に…お化粧について教えてくれませんか?」
「私でよろしければ、喜んで。」



しばらくの間リルムはパピィと「この方が似合うんじゃないか」と楽しそうにアロマを化粧していった。
「うん!可愛いですわ」
「アロマたん似合ってる!」

口紅を塗ったり、アイラインを引いたり…。
「ナチュラルメイクにしてみましたわ。どうですか?」
リルムは手鏡を渡す。
「似合ってますか?」
「うん!」
「…ラットさん喜んでくれるかしら…」
アロマはさりげなく言ったが、リルムとパピィは盛り上がり…
「じゃあ一緒に出掛けたらどう?」
「いい考えですわ。」


結局、妖精界に戻りラットと会う約束をした。
化粧をして、パピィから「この間靴をもらったから貸すわ!」と言われ、アロマは靴を借りた。
高めのヒールのある靴。
アロマは、はいたことのない靴に戸惑いながらも待ち合わせ場所でラットを待った。
そして待ち合わせ時間前にラットがやってきた。
「どうしたんだ?急に呼び出して。」
「え、えっと…会いたかったからです。」
その言葉に照れたのか、ラットは少し顔が赤くなる。
「…そ、そう…か。どっか見に行きたい場所あるか?」
「え、えっとそうですね…。」
「考えてないなら、そこらへんの店見に行くか?」
「はい…」

「あの。ラットさん」
「どうした?」
「…(お化粧気付いてないのかな…?)」
「行きたいところあるのか?」
「…いえ、なんでもないです。行きましょう。」



店を何店か見に行ったが、途中でアロマは足の痛みを感じていた。
しかし自分から誘ったゆえに、言い出せなかった。
「少し休むか?」
「そう…ですね。」
近くのベンチに腰掛ける。
「足、大丈夫か?」
ラットから一言そう言われアロマは驚いた。
「さっきから歩き方変だぞ。靴擦れしてるんじゃないのか?」
「だ、大丈夫ですよ。」
「いいから。靴脱いでみろ。」


少し強い口調で言われて、アロマは靴を脱いだ。
「靴擦れしてるな…。ちょっと待ってろ、絆創膏買ってくる。」
すぐ近くの薬局に行き、絆創膏を足に貼った。

「俺が気付かなかったら、そのまま行くつもりだったのか?」
「…ごめんなさい。」
「気付かなかった俺も悪いけど、痛かったら言ってもいいんだぞ。」
「ごめんなさい。だって…今日お洒落をしてラットさんと会いたかったんです。」
アロマは俯いて答えた。
「お化粧もリルムさんからしてもらって…パピィちゃんから靴も貸してもらって…。」
「化粧…?」
ラットはどうやら気付いていなかったらしい。
「でも結局ラットさんに迷惑かけて…お洒落しても意味ないですね…」
泣きそうなのをこらえる。
ふいに頭を優しく撫でられる。
「悪い、気付けなくて…。けど普段のままでいい。」
「そうです…か。」
アロマは少し落ち込む。
あんなにリルムとパピィが自分のために協力してくれたのに。
「今のままで十分可愛いよ」
「ほ、本当ですか…!?」
アロマがラットを見上げると、ラットも顔が赤くなっていた。

「お洒落とかもしてもいいけど、まだ普段のままでいいんじゃないか?」
「その時はちゃんと気付いてくださいよ?」


■ 梨璃 (209回/2013/05/02(Thu) 21:48:20/No5268)

06. 恋人同士に見られた日(ラトアロ+ポーロ)

妖精界の小さな公園。
今日はそこで、フリーマーケットが行われていた。
アロマも興味本位でラットと共に出かけてみた。
「初めてフリーマーケットに来ましたけど、多いですね。」
はぐれないように、見て回っていく。



「あれ?アロマちゃん?」
ふいに声をかけられる。
「こっちこっち。」
手招きされた先にはラットと同年代の男の子。
「ポーロくん。こんにちは。」
「知り合いか?」
「ポーロくんは家が近所で昔からよく遊んでいたんです。」
「幼なじみってやつですよ。そうだ、よかったらどうですか?」

ポーロが開いた店は花の種や苗、小さなブーケが並べられていた。
アロマは商品を見ていくと、一つのブーケを気に入ったのか手に取る。
「これ綺麗…アネモネね。」
「アネモネ?」
ラットが聞く。
「アネモネっていうのはキンポウゲ科アネモネ属の総称です」
「はあ…。」
花に詳しくないので言われてもわからないのであいまいな返事を返す。
「折角だから買ってもらったら?彼氏に。」
「ええええ!」
思わずアロマは顔が赤くなる。
初めて恋人同士に見られたのだ。
今まで、兄妹だと言われたりして恋人だなんて言われなかった。
「かれ、彼氏って…!」
「違うの?」
顔から火が出るというが、アロマはその言葉を実感していた。
「じゃあ、このブーケ一つ…。」
「はい、ありがとうございます。300円です。」
財布から金をだし、購入する。
「200円のお釣りです。」
ポーロは釣銭をラットに手渡す。
一緒に渡されたのは小さなメモ。
「はいどうぞ。」
ポーロはアロマにブーケを手渡す。




何店か見て回った後、2人で近くのベンチに座って休んでいた。
「い、いろいろありましたね。」
アロマは先ほどポーロから言われた言葉を気にしていた。

『彼氏』
「その…ラットさん。」
「…あ、なんだ?」
ラットもポーロの店以来どこか様子がおかしい。
「えっと、さっきのポーロ君のお店ですけど…」
「ブーケ代出すっていいたいのか?いいよ」
「それと…さっきポーロ君に言われた…その彼氏…って」
「違うのか?」
ラットはからかったように聞き返す。

「(い、意地悪だ)…彼氏…です。」
アロマは再び顔が赤くなった。




「ラットさんもさっきからどうしたんですか?心ここにあらずって感じですが…」
「お、お前は気にしなくていいんだよ。」



ポーロからもらったメモに書かれてたのは
「赤いアネモネの花言葉は 『君を愛す』ですよ。教えてあげてみてください。」



「(言えるか、そんなこと…!)」




■ まみいー (24回/2013/05/02(Thu) 22:27:48/No5269)

こんにちは‼まみいーです!
梨離さん、凄い!!
私ラトアロ好きなので、お話になっちゃうと鼻血ドプドプ
ですよ!すこし、素直になれない2人ですが、今後の展開が楽しみです!
まだ、続き書くんですか?その時は、私、絶対見ますので!!宜しくお願いします!
ラトアロにポーロが絡んで、面白く読ませて頂きました!期待していまあーす!

それでは!


■ 梨璃 (210回/2013/05/04(Sat) 21:43:38/No5281)

まみいーさんこんばんは★

ご感想ありがとうございます。
ラトアロ好きですと!?ありがとうございます!

ラット大好きなアロマとそんなアロマを大切にするラットのイメージで描いています。
あと2つ続きますよ!


では!


■ 梨璃 (211回/2013/05/04(Sat) 21:44:35/No5282)


07. あなたに追いつく目標

***擬人化設定 ラット 高二 アロマ 中三
アロマ視点





休日の昼下がり、私の家にラットがやってきた。
テストが近いから勉強を見てほしいと頼んだ。
「成績いいだろ?まあいいけど」
「え、えっと応用もかねてですよ」
そうは言ったがパピィちゃんから「勉強を教えてって頼んでみたら?」とのアドバイスを受けて。
「まあ今年受験だからな」
そう。今年は私たちにとって重要な年。
夏休み明けには自分の進路を決めなくてはいけない。
しかし、私の志望校は一つ。
「そういや何処受けるんだ?」
「ラットさんの通っている高校ですよ。」
「なんで?アロマの学力だったらもっといいところ…」
やっぱりそう言われたか…。
「けど、ラットさんは私の目標です」
「目標?」
「はい。その、ムルモ様は怖いとか冷たいとか言われてますが…本当は優しい方ですし、落ち着きもありますし。
私はそんなラットさんが好きですよ」
「…そりゃどうも…」
少し目をそらされて言われた。

「一年しか一緒にいられませんけど、その間だけでもラットさんに追いつきたいんです」


「…ちゃんと入れよ?その前にテスト勉強が先だ」
「はい。」
再び教科書を開いた。



「(入学したら絶対あいつらにからかわれるな)」




****
あいつらとはミルモやヤシチたちのことです。


■ 梨璃 (212回/2013/05/07(Tue) 20:53:17/No5289)

08. そんな顔もするんだね

07 あなたに追いつく目標の続きです。
擬人化設定





「知ってるか?新しい1年のすっごい美人な子!」
「知ってるべ!可愛い子だべー」
入学式以来、学校で噂になっている事。
「アロマって子だよね。お嬢様らしいよ」
「ビケーの女の子情報は早いな」
「僕には遠い存在だよ…」




「おいおい、ラットー彼女モテモテだなー」
「まあ美人でおっとり、天然ときたらなあ」

クラスメイトの会話を聞きながら、ラットをからかうミルモとヤシチ。
「まあ拙者の方がお似合いだけどなー」
「はあ?お前には似合わないつーの。俺の方が…」

「まあミルモ様?どういうことですの?」
後ろから声をかけられ、ミルモが恐る恐る振り返ると、リルムが腕を組んで立っていた。
その後ろでアクミも呆れたように見ている。
「リルム…!」
「私よりもミルモ様はアロマさんを…!」
「い、いやこれは」
「なにやってんだよ…」

入学して、ラットは4人に付き合っていることを打ち明けた。
ミルモとヤシチは納得のいかない様子だったが、リルムは「おめでとうございます」と素直に祝い、
アクミは「お前でも好きなやついるんだな」とからかわれたが。

「ってかその前に彼女と一緒に帰らねえの?」
「ああ今日は他の奴らと先に帰るって」

「でも油断していてはだめですわよ」
「油断?」
「アロマさんいつか誰かから告白されたりしますわよ」





一方そのころ
「入学してもう一ヶ月ね」
喫茶店でパピィ、アロマ、ムルモの3人で集まっていた。
「それにしてもパピィがこの高校に入れたことが奇跡でしゅよ」
「うるちゃいわね!」
パピィもムルモがこの学校に入ると知って、必死に勉強し無事合格した。
「そういえばアロマしゃん、クラスの男子が噂してたでしゅよ」
「噂…?もしかして悪いの?」
「ちがうわよ!アロマたんこの学年で1番美人って言われてるわよ」
「うそでしょ…?」
アロマは恥ずかしさや混乱で頭がいっぱいだ。
「告白されたらきっぱり断りなちゃいよ!」
「う、うん…」
「それよりラットしゃんと付き合ってるなんてまだ信じられないでしゅ」



それから数日後

「あれ?アロマたんなんだか嬉しそうね」
「今日ラットさんと一緒に帰るの。下駄箱で待ち合わせ」
「よかったわね、あたちも下駄箱まで一緒に行こ!」
「ムルモさまと一緒に帰るの?」
「う、…アロマたんも言い返すのね」
今日は委員会活動でムルモが当番。


そして下駄箱でアロマが靴に履きかえようとすると、靴の上に一枚の封筒がおかれていた。
「なになに?手紙?」
「そうみたい」
端によって手紙を見てみる。
『アロマさんへ
本日 放課後体育館裏にきてください』

「これってラブレター!?」
「パピィちゃん声大きいよ…!」
パピィが思わず大声で言ってしまった。
「ちゃんと断らなきゃ」
「うん。あたちもムルモ待ってるからここにいるわ」


そして生徒会室では
「…なんで俺がお前の手伝いをしなければならないんだ?」
資料をホッチキスで止めつつ、文句をこぼすラット。
「いいじゃないですか。これくらい」
生徒会長のラムダ。
ラットとは知り合いだが、仲がいいというわけではない。
ラムダは顔は成績優秀、美形で、学校でも人気なのだが真の性格はかなりのドS。
このことを知っているのはラットのほかにミルモたちぐらいで、たいていは「真面目で優しい生徒会長」
そのイメージであった。
「ラットさん、ちゃんと仕事してください」
副生徒会長のシーナがパソコンを打ちながら注意する。
「…はい」

それから数十分後、すべての資料まとめが終わった。
「はあ、…じゃあ帰るぞ」
「ありがとうございます。また手伝ってくださいよ?」
時計を見ると、待ち合わせの時間を20分も過ぎていた。
「帰ってないよな…」

ラットが下駄箱に行くと心配そうにたっているパピィがいた。
「あ、ラットさん!」
パピィはラットに駆け寄る。
「なんだ?」
「大変よ。アロマたん体育館裏に呼び出されちゃったわよ!」
「呼び出された…!?」
「ラブレターかも。だけど30分以上前に行ったわよ」
「体育館裏か…行ってくる」

ラットが体育館裏に行くと小さく声が聞こえる。
アロマが男子生徒を前にしていた。

「おい、お前!」
「ラットさん…?なんでここに…」
「お前、アロマに気があるのか?」
「え、その…僕は…」
「あの、ラットさん。この方は私のクラスメイトなんです。」
アロマが急いで訂正する。
「友達?」
「その、僕アロマちゃんと友達のパピィちゃんの従兄弟のイナバっていいます」
「パピィちゃんとムルモくんの関係を応援したくて…それでアロマちゃんに相談したんです」
イナバは泣きそうな声で答える。
「だったらなんで手紙なんかに…!」
「その、言おう言おうと思ってたんですけど、言えなくって…それで手紙に…あ、じゃあ僕帰りますね」
イナバは急いでその場から帰っていった。


「ラットさんそれよりなんでここに?」
「その、パピィから聞いて…心配だったし…」
そのことを聞いてか、アロマは嬉しそうに微笑んだ。
「そんな顔もするんですね」
「なんだよ急に」
「いえ、ラットさんでも焦ったり、そんなに怒ったりするんですね。私のために…嬉しいです」
そう言われてラットは顔が赤く染まった。
「馬鹿。とっとと帰るぞ」




それを影で見守っていた数名の影。


後日、「アロマと付き合ってる男性発覚!?」
大きく見出しが立ち、生徒の中で大事件となったのはまた別の話。



■ 梨璃 (213回/2013/05/07(Tue) 20:58:32/No5290)

今回でお題は終了です。

3以降付き合ってるラトアロで書かせていただきました。
思いっきり甘くさせたりと書いていて楽しかったです。

最後はオリフェを登場させてみました。
呼んでくださった方ありがとうございました!


では!




4963/ 本当に信じるべきもの
□投稿者/ きらりん -65回-(2012/11/23(Fri) 00:28:49)

2つも連載してますが、思いつくままにまた新たに書きたくなりました。時間軸ではちゃあみんぐ終了後。楓達が中学校卒業?した春休みくらいのことです。 

 第1話「暗躍」

 「―準備は整ったなお前ら」
薄暗いどこかで、男の低い声が響きわたる。

 「―はい」
それに応える別の男の声も聞こえる。

 「この計画で――本当にそんなことができるんですか?」
これは女の声だ。

 「――ああ。この計画でまず妖精と人間との間に疑心をかけるきっかけとなる。そして心が不安定になった時こそ、我らの真の目的が果たされる」

 

                *

 楓の家では、ミルモが大好物のくもっちょを食べていた。

 「おーい、次のくもっちょはどこにあるんだ?」

 「もうないわよ!お小遣いはたいちゃったんだからね!あ〜あ・・・」
楓はため息をついていた。

 「大丈夫ですわミルモ様!」
そこへいきなり小包みを背負ってリルムが窓から入ってきた。ミルモはそれを見て嫌そうな顔をする。

 「そろそろミルモ様のお腹が空く頃だと思って、私の手づくりチョコレートを用意してきたんですの!」
リルムが小包みから出してきたのは――いつもによっていつものごとく、うねうねと動くチョコレート―と言ってもいいのだろうかこれは―だった。

 「ゲッ!い、いや・・・。もう俺腹いっぱいなんだけど・・・」

 「まあまあそうおっしゃらずに!」
リルムは嫌がるミルモの口に無理やりチョコレートを押し込んだ。・・・案の定まずかったらしく、ミルモはその場に倒れ込んだ。

 「まあミルモ様ったら!あまりにもおいしすぎて倒れてしまったのですわね!」
こちらはこちらで、ポジディブに解釈している。

 「あ、ねぇねぇ、リルムちゃん。結木くん、どうしてる?」
ミルモのことはほっておいて、楓はリルムに尋ねた。

 「結木様なら家で読書に没頭なさっていますわ」

 「やっぱりそうかぁ〜・・・」
楓の予想は大体当たっていた。本好きの結木なら本でも読んでいると考えるのが妥当であろう。

 「・・・あ、でも。確か、新作の本が入ったらしいから本屋さんに行くとか言っておられましたわ」

 「・・・えっ!?本当!?」
楓は思った。もしかしたらその本屋に行けば結木に会えるかもしれないと。

 「それってどこどこ!?」

 「確か・・・。結木様達が通ってられる学校の近くの本屋さんだったはずですわ!」

 「わかった!ありがあとう、リルムちゃん!ゆっくりミルモと楽しんでてね!」
楓はそう言って、軽いかばんを一つ持って、胸を躍らせながら家をでていった。

 「楓様・・・。結木様に会えるといいですわね・・・。では私はミルモ様と一緒に・・・ってあら?いませんわ・・・」
リルムがミルモがいるはずの方をむいたときには、ミルモはいなかった。

 「結木くんいるかな〜」
楓は外を歩いていた。歩きながら結木に会えるのを楽しみにしている。すると・・・。

 「お〜い」
楓のかばんの中からだるそうな声がした。

 「・・・そのマヌケな声はミルモ!なんでここにいるの!?リルムちゃんは!?」
だるそうな声の正体はミルモだったのだ。

 「これ以上あそこにいたらさらにリルムの料理を食べる羽目になってたからよ〜。こそっと抜け出してきた」

 「抜け出してきた、じゃないでしょ!リルムちゃんがかわいそうじゃない!」
楓は怒るが、ミルモはそっぽをむいている。

 「もう・・・」
楓は言いながら、前方から少女―と言っても、楓達と年は変わらないくらい―がやってくるのを見た。その少女はどこか寂しげな雰囲気をもっていた。

 「・・・?」
楓と少女はそのまますれ違った。楓はつい少女を振り返ってしまう。すると少女はもういなくなっていた。

 「・・・あれ?」
思えば、少女の進んだ道の右に曲がり角がある。きっとあそこを曲がったのだろう。楓はそう思うことにした。

 ――とそこに。

 「ミルモ様あああああああ!」

 「ゲッ!リルム!」
リルムの声が聞こえてきたのだ。

 「やっと、やっと見つけましたわあああ!」
リルムが息を切らしてうちわで飛んできた。

 「私とってもとっても心配したんですのよ!」
リルムが楓の肩に降り立った。ミルモは何も言わずにただ逃げた。

 「ああっ!ミルモ様お待ちになって!」
リルムもその後を追いかけていった。

 「・・・大変だなあ」
楓が苦笑いしていると―

 「あれ、南?」
後ろから声が聞こえてくる。

 「!結木くん!久しぶりだね!!リルムちゃんに聞いたんだけど本屋には行ったの?」
楓は好きな人の姿を見つけて顔をほころばせた。

 「ああ」

 「もう読んだ?」

 「ああ。この本面白くてさ。まず主人公の男が―――」
それから結木の本の語りは30分ほど続いた。

 

 「・・・・・・す、すごいね。今度読んでみようかな」
30分後。結木の話が思った以上に長くてげっそりとした楓は乾いた笑いをしていた。

 「ああ。面白いんだ本当に。・・・・・・よかったら今度一緒に本屋行って、デザートのある店にでも行かないか?」

 「・・・え!?う、うん!行く!絶対行くよ!」
――これって、デートだよね!楓は嬉しくて今にも天にも昇る気持ちだった。


                *

 「ミルモ様!お待ちになって!」
一方、リルムはミルモを追いかけていた。

 「しつけーんだよ!」
ミルモもリルムに追いつかれないよう逃げる。絶対にリルムの料理だけは食べたくなかった。

 「・・・あり?」
ミルモは気づいた。ここは楓と別れた場所。結局もとに戻ってきてしまったのだ。しかもまだ楓がいて、その横には結木がいる。

 「うお〜い!」

 「・・・あ!ミルモ!」
楓は呼ばれて気づいた。

 「それにリルム!」
結木もリルムの姿を目で捉えた。

 「結木様!楓様と会ってたのですわね!せっかくだから今からダブルデートをしたいですわ!」
リルムが目を輝かせている。

 「・・・・・・」
反対にミルモはげっそりとしている。


 
 そんなミルモ達を水晶玉らしきもので見ていたある者は言った。

 「こいつは妖精界の王子―ミルモだったな」

 「そして―」
水晶に写っている画面が変わる。――楓だった。

 「これがそのパートナー、南楓・・・」

 「・・・周りから潰していきましょう」

 「そうだな」
部下のセリフに、にやっと笑う男であった―。


今回で終わりです。さっそく敵みたいなのが登場!



ミルモたち勝てるんでしょうか!



そして出てきた少女の正体は?




そこらへんなんにも考えてません。





では終わります!






■ きらりん (66回/2012/11/23(Fri) 17:24:50/No4965)

 何か思いつきそうなのでいきます。

 第2話「平和」

―ここは、日高家。いつものように安純がヤシチをこき使っていた。

 「――はぁ」
ヤシチは窓をふきながらため息をついていた。

 「拙者は・・・なぜこんなことをしているのだ・・・。今日はパンティー探しに行くはずだったのに・・・」

 「ちょっと!掃除終わったの!?」
部屋のドアを開けて、安純がずかずかと入ってくる。

 「ま、まだ、です・・・」

 「じゃ、さっさと終わらせなさいよね!」
安純はそのままどこかに行ってしまう。ヤシチはそれを見届けると、一人せっせと掃除をするのだった―。

 
 一方松竹家では。

 「松竹しゃん!マシュマロくだしゃいでしゅ!」
ムルモがブリッコして松竹におねだりしている。

 「うん。確かあそこにいいのあったはず」
松竹は広い家の中、冷蔵庫にマシュマロを探しに行く。

 「ま、待ってください坊っちゃま!マシュマロなら探して私が!」
そこへ松竹家の執事?の平井がさっと出てきて言った。

 時間ないのでいったんきります。


■ きらりん (67回/2012/11/23(Fri) 17:26:36/No4966)

早速訂正お願いします。平井のセリフ、

 「ま、待ってください坊っちゃま!マシュマロなら私が探してきます!」

でお願いします。


■ きらりん  (1回/2012/11/23(Fri) 23:32:48/No4968)

 続きです!

 「あ、平井!よろしくね!ムルモ、今平井に頼んできたからね!」

 「はいでしゅ。松竹しゃん。それまで僕と遊んでほしいでしゅ!」
ムルモはにこっと笑う。

 「うん!」

 松竹家も、平和である。


 ――そして、ミルモ達。

 「・・・・・・」
ミルモはリルムにべったりされてげっそりしている。

 「ミルモ様?どうなされました?」
こちらはこちらで明るいオーラが出ている。

 「結木くん!これってデートなんだよね!」

 「・・・・・・」
楓が笑うと、結木は顔を赤くして俯いた。

 (頷いてくれないけど、否定はしない・・・。やっぱりそうなんだ!)
楓はそれだけで嬉しくなっていた。・・・結局リルムの提案で、今日ダブルデート?を行うことになったのだ。


そして本屋・・・。

 「あそこにあるんだ」
結木に楓は案内されて、本屋の奥の方に向かう。

 「へぇ〜」

 「俺は向こう行ってるぞ〜」
ミルモは楓達と別れてうちわを使って飛んだ。

 「あ、私も!」
リルムもミルモのあとを追いかけていった。


 「結木くん。本ってこれ?」

 「ああ。やっと発売されたから買いたかったんだ」

 「へぇ〜・・・」
微笑ましく話す楓と結木の後ろで、黒い影が動いていた。

 「・・・・・・」
それは小さな影で、妖精のような体型だった。

 (王子ミルモと南楓の周りから潰していく、か・・・。だとしたら、王子ミルモの婚約者リルムと結木摂から・・・だな)
その黒い影は手からいきなり黒い波動のようなものを出した。楽器も出さなかった。そして出てきたのは―――リルムだった。

 「―よろしく、リルム」
リルムは、ニヤリと笑った。


 ――一方。

 「ミルモ様!可愛い感じの漫画ですわね!きっとこの女の方と男の方が結ばれるんですわ!私達もこうなりたいですわ!」
リルムは少女漫画の表紙を見てうっとりしていた。

 「ハァ〜。もうつきあってらんねーや!」
ミルモはため息をついて、楓達のところに戻ることにした。今度はリルムは追いかけてこなかった。妄想の世界に旅立ってしまっている。

            *

 「これで本が買えた」

 「よかったね結木くん!」
結木はレジでの会計を終えて、楓のもとに戻ってきた。

 「そういえば南は何か買わないのか?」

 「・・・私はミルモのくもっちょに全部お小遣い使い果たしちゃったから。全くうるさいのよね。くもっちょくもっちょって」

 「結木様〜!!」
楓が再びため息をついたところに――今日で何度目だろう――リルムがやってきた。

 「あ、リルム」

 「あれ?ミルモは?一緒じゃなかったの?」
楓は不思議に思って尋ねる。

 「ミルモ様なら、私の知らない間にどこかに行ってしまいましたわ」

 「もう、ミルモったら・・・」

 「お〜い、楓〜!」
すると当の本人のミルモがやってきたのだ。

 「もうミルモ!またリルムちゃん置いてっちゃったの!?」

 「・・・え?リルム?」
楓に言われて、ミルモは初めてリルムがこの場にいることに気がついた。リルムは先程まで少女漫画に見惚れて妄想していたはずだ。自分が行ったあとすぐに楓達のところに戻ってきたのだろうか?――ミルモはそんな考えを頭の中で張り巡らせていた。

 「?どうしたのミルモ?」
そんなミルモを見て、楓が尋ねた。

 「・・・いや」

 「・・・・・・?」
楓はミルモの態度に気になりながらも、そのままミルモや結木、リルムと家に帰ることにした。

 「――南、じゃあな」

 「うん!バイバイ結木くん、リルムちゃん」

 「さようならですわ、ミルモ様、楓様!」
そして普通に別れた。結木達の姿が見えなくなった後、楓はミルモに尋ねた。

 「ねぇ、何かあったの?さっき様子が変だったけど・・・」

 「・・・リルムが先に戻ってきてたから・・・」

 「・・・?それがおかしいの?」
ミルモの言いたいことがいまいちよくわからない。

 「だって俺が見た時は漫画に熱中してたからよ〜」

 「それって単にリルムちゃんがミルモより先に戻ってきただけじゃない」

 「・・・そうだよな」
楓の言葉を聞いて、ミルモは顔を上げた。

 「あ!くもっちょ!楓、くもっちょくれ!」

 「またそれなんだから・・・。もうないってば」
楓はそう言いながら、ミルモと帰っていった―。

            *

 「リルム。今日はミルモと漫画でも見てたのか?」

 「ええ。とっても楽しかったですわ」

 「そうか」
いつもの会話――だが、結木はリルムと話していて違和感を感じた。――だが、何なのかと言われるとよくわからない。

 「・・・・・・?」

 「結木様?どうかされたのですか?」

 「いや・・・」
リルムが尋ねてくる。結木は慌てて首を振った。違和感のことは考えないようにして、とりあえず結木とリルムは家へ向かうのだった――。

            *

 ここは本屋だ。そして少女漫画が売っている棚がある。そこに―――

 リルムがいた。

 「ああ・・・。私もミルモ様と・・・♥」
・・・まだ妄想に浸っていた―。

 終わります。










 









■ きらりん (68回/2012/11/24(Sat) 22:05:01/No4971)

 続きいきます!

 第3話「偽物」

 「・・・あら?」
本屋にいたリルムは初めて我に帰った。

 「いやですわ、私としたことが・・・。ミルモ様、楓様、結木様ーっ!」
リルムはほかの客を避けて、ミルモ達を探す。


 ―ここは結木の家だ。

 「さて、早速読むか」
結木は今日買った本を取り出して読む準備をしていた。もう1人のリルムがそれを見て言う。

 「結木様。私、ムルモ様に会ってきますわ」

 「ああ」
結木はなぜミルモではなくムルモなのだろうという疑問も浮かんだが、深くは考えないことにした。そしてリルムが出ていくのを見届けて、本を読むことにした。その10秒後のことである。

 「結木様ーっ!」
またリルムが窓から戻ってきたのだ。

 「・・・?リルム?」

 「ひどいですわ、私を置いていくなんて」
リルムは困ったように結木のベッドに降り立った。

 「・・・置いていく?それにさっきムルモのとこに行ったんじゃなかったのか?」

 「私を本屋に置いて行かれたではありませんか!まぁ夢中になっていた私も悪いんですけれど・・・」

 「?」
結木はリルムの行っていることが全然わからなかった。

            *

 松竹家。

 「最高級のマシュマロはおいしいでしゅ〜♪」

 「よかったね、ムルモ」
そこではマシュマロをおいしそうに食べているムルモを、松竹が笑いながら見ていた。――そしてそれを、さらに見る者達がいた。

 「――リルムよ、こいつらがミルモと南楓を取り巻くうちのパートナーか?」
これは、先程楽器も使わずに、偽物のリルムを生み出した妖精だ。

 「はい。ミルモ様の弟の第二王子であるムルモ様と、そのパートナー、松竹様ですわ」

 「―そうか」
にやっと妖精は笑うと、また手から黒い波動のようなものを出して――ムルモを作り出した。

 「君もこれからよろしく」

 「もちろんでしゅ・・・」
作り出されたムルモもにやっと笑った。

 
 ―一方、本物のムルモは。

 「松竹しゃん。ちょっとお兄たまのとこに行ってくるでしゅ」

 「うん。南さんにもよろしくね〜」
ムルモが外へ出るのを見届けてから、松竹は、うーんと腕をのばしてリラックスする。とそこへ。
 
 「松竹しゃん!」
ムルモの声が聞こえる。

 「・・・あれ?ムルモ。もう帰ってきたの?南さんの家には行かなかったの?」

 「そうなんでしゅ。やっぱりどうでもよくなってきたでしゅ」

 「ふ〜ん・・・」

            *

 「お兄たま〜!楓しゃん!」
本物のムルモは、楓の家に遊びにきていた。

 「何なんだよムルモ!」
ミルモはムルモがまた何か変なことを言い出すのではないかと思ったのだ。

 「今日はただ遊びに来ただけでしゅよ」

 「ふ〜ん」
ミルモは怪しげにムルモを見ている。

 「ムルモちゃんこんにちは♪」

ムルモは楓を見ると、

 「こんにちはでしゅ、楓しゃん♥」
いつものようにブリッコしていた――。

            *

 「リルム。どういうことなんだ?まだ本屋にいたって――?じゃ、さっきムルモのとこに出かけてったリルムは――」

 「結木様――それって、私でない私だったのかもしれませんわ・・・」
結木の話を聞いて、リルムは呟いた。

 「リルムじゃないリルム?」
結木にはさっぱり意味が分からない。

 「――私、ムルモ様のところに行ってみますわ!何かわかるかもしれませんわ!」
リルムはそのまま出ていってしまった――。

 「・・・あ、おい、リルム」
・・・それにしても、今日はよくわからない一日だ。結木は本当にそう思った。 

 ――そして10分後。リルムが戻ってきた。

 「リルム。何かわかったか?」

 「・・・いいえ、何もわかりませんでしたわ」
リルムは静かに結木の問いに答えると、ベッドに降り立った。そして―――

 「リルムで――ポン!」
リルムはタンバリンを出して魔法を使うと、本棚に入っていた結木の本を浮かせた。

 「!?何するんだリルム!」
結木は驚いて、持っていた新しい本を離した。すると、その本まで浮かんだ。そして、空の彼方に飛んでいってしまったのだ。

 「っ!!」
結木はリルムを睨んだ。だが、リルムはそれに動じることなく、平然としていた。そして――何も言わずに出ていった。



■ きらりん (72回/2012/11/25(Sun) 17:43:27/No4975)

 続きいきます。

 第4話「すれ違い始めた」


 一方、リルムは、松竹家に調べに来ていた。

 (結木様の話だと、私でない私がいるということになりますわ・・・。でも、どういうことですの?)
リルムは窓からそっと覗いてみる。するとそこには松竹がソファーに座って、楓の写真を眺めている。ムルモもその横にいた。

 「松竹様!ムルモ様!」
リルムは入りにくかったがそれどころではなかった。もう1人の自分のことを聞き出すのが先だ。

 「!?な、な、何かな!?」
動揺した松竹は、慌てて写真を後ろに隠す。

 「・・・先程私がここにいらっしゃいませんでしたか!?」

 「え?ううん、こなかったけど・・・」
松竹は、楓の写真のことをつっこまれるのではないかと思っていたが、全く違うことを言われホッとする。

 「・・・僕も知らないでしゅ」

 「・・・そうなんですか。ありがとうございましたわ!」
リルムはそのまま飛び立った。

 「・・・ってあれ?今の質問、どういうこと?」
松竹が首をかしげていると、横にいたムルモも、

 「わかんないでしゅ」
そう言った。
 
            *

  リルムは、結木の家へ戻る途中、考えていた。

 (松竹様やムルモ様のところには来てなかった・・・。じゃあそのもう1人の私は、一体どこに・・・)
そしてリルムは結木宅に着き、窓から入る。

 「ただいまですわ。結木様」
言ってリルムは気づいた。結木の元気がないことに。

 「・・・結木様?」
リルムが結木に近づくと――

 キッ!と結木がリルムを睨んだのだ。

 「!?」
リルムはその気迫に震えてしまう。

 「・・・様子がおかしいですわ、結木様・・・」
リルムが心配して結木の顔を覗き込んだが――

 「出ていってくれ」

 「――!?」
結木から発せられたのは、想像もしていない言葉だった。

 「あんなことするようなら、出ていってくれ」

 「ま、待ってください結木様!私、何もしてませんわ!!」
リルムが弁解しても、結木は聞く耳をもたなかった。――本当に、リルムは何も知らなかった。なぜなら自分は、松竹家に行ってきただけなのだから。

 「じゃあこれは?」

 「え・・・っ!?」
リルムは言われて気づいた。―結木の本棚が、空っぽだということに。そして、結木がとても楽しみにしていたという買った本まで、なくなっている。

 「ゆ、結木様の本が!!なくなってる!!」

 「リルムがやったんだろ!」

 「――ち、違いますわ。私は――」
やってない。そう言おうとして、リルムは気づいた。結木はもうリルムがやったと思って、自分の言うことに耳を傾けてくれない。

 自分のことを、信じてくれない。

 「う・・・わああああああああん!」
あまりの悲しみに、リルムは窓から飛んで出ていった。

 (どうしてなんでしょう?結木様の本がなくなってるなんて・・・。結木様は私がしたとおっしゃる・・・。でも私は、何もやってないのに・・・!)
リルムはそこまで思って、もしかしたら、と思う。

 「もしかして、もう1人の私が・・・」
そう呟いてはみたけれど、やっぱり、何よりも、パートナーの結木に、信じてもらえなかったのが悲しい。2年間ずっと一緒にいたのに―。

 終わります。今回はリルムメインですが、次はムルモと松竹に魔の手が忍び寄ります。ヤシチと安純は・・・?ミルモ達は全然出てきてませんね。


■ きらりん (73回/2012/11/26(Mon) 14:15:13/No4976)

 今回は主にムルモ達の話。

 第5話「忍び寄る」

 ここは松竹家――。

 「ねぇ、ムルモ。南さんの写真、どこかに落ちてない?」
松竹は、家にある楓の写真の量じゃ足りないらしい。

 「・・・松竹しゃん。楓しゃんはもう結木しゃんと付き合い始めたんでしゅよ」
ムルモは目を細めて言った。

 「現実逃避もそろそろやめたほうがいいでしゅ。今のままだったら松竹しゃんは『すとーかー』になってしまうでしゅ」

 「・・・ム、ムルモ!?一体どこでそんな言葉を覚えてきたの!?」
ムルモが毒舌になり、バックにガ━━(;゜Д゜)━━ン!!という擬音語をつけて尋ねる松竹。

 「もちろん人間界でしゅ」

 「・・・あ、そう・・・」
松竹は、ムルモに本当のことを指摘されたようで、涙目になる。

            *

 「じゃあお兄たま、楓しゃん。バイバイでしゅよ」
一方。ムルモは楓達の家を去ろうとしているところだった。・・・ということは、松竹の家にいるムルモは偽物―。

 「うん。気をつけて帰ってねー」

 「しばらくくるなよー」

 「何言ってんの!」
楓はミルモを一喝する。

            *

 ムルモは窓を見ていた。

 「どうしたの、ムルモ?」
松竹が尋ねた。――つまり、窓を見ている、松茸と一緒にいるこのムルモは偽物だ。

 「・・・・・・ムルモでポン!」
―偽ムルモは魔法を使った。本物のムルモが、いつか自分と遊んでくれず、その腹いせに使った魔法―――。それは、楓の写真を集めて、紙飛行機にして、どこだかわからない遠い所まで飛ばしてしまう魔法だった。――これと同じ魔法を、使ったのだ。すると、あっという間に、松竹にとって楓にふられてからは特に大事にしている写真を、そのまま紙飛行機にして外に飛ばしてしまった。

 「・・・ああーっ!何するんだムルモ!南さんの写真が!・・・今度はムルモといっぱい遊んでるじゃないか!」
松竹は、いつか自分がムルモと遊んであげなくて、それが、ムルモが楓の写真を外にやってしまった原因だったと思い出す。松竹は偽ムルモを睨んだ。

 「・・・・・・」
だが、偽ムルモは何も言わずに、外に出ていってしまう。

 「・・・ムルモのバカああああああ!・・・あれは、あれは・・・。僕が大事にしている南さんの写真なのに・・・。南さんが結木とつきあってから、特に大事にしてるのに・・・」
ムルモは泣き崩れた・・・。そんな中、ミルモ達と会っていた本物のムルモが帰ってきた。

 「ただいまでしゅ!!・・・ほえ?松竹しゃんどうしたんでしゅか?」
泣き崩れる松竹に驚いて、ムルモは近寄った。

 「そんな時は僕の笑顔でイチコロでしゅ〜♥きゃはっ♥」
ムルモは松竹を元気にして後で礼にマシュマロをもらおうと思い、ブリッコする――が。

 「・・・ムルモなんか嫌いだよっ!どこかに行っちゃえ!」
松竹は言葉ではらった。

 「ほえ!?もしかして僕のブリッコが気に入らなかったんでしゅか?」
ムルモは驚いて、ブリッコは僕の売りなのに・・・、と呟く。

 「ムルモなんか出て行けーっ!」
松竹は、余りにも悲しくて、言ってしまった。

 「いきなり出て行けってなんでしゅか!おかしいでしゅ松竹しゃん!」
ムルモにはわけがわからない。

 「出ていってくれえええっ!」

 「・・・・・・」
ムルモも悲しくなる。自分は何もやっていない――むしろ今まで松竹に尽くしてきたのに、なんでこんなことを言われなければならないのだろう。

 「・・・わかったでしゅ。僕だって、出てってやるでしゅこんな家!」
ムルモは怒って、出ていった――。

 「・・・・・・」
それを見届けた松竹は、呟いた。

 「何で・・・。ムルモ・・・」
怒りもあったが、後悔の念も、松竹の頭を渦巻いていた。


■ きらりん (74回/2012/11/26(Mon) 16:30:19/No4977)

 第6話「相談」

 一方、リルムは、一人で河原にいた。

 (結木様は・・・。私を信じてくださらなかった・・・。私は、結木様に嫌われてしまったんですわ・・・)
先程のことが悲しくて、涙をこぼす。

 「リルムしゃ〜ん!」
すると、後ろから声が聞こえてくる。

 「・・・ムルモ様!」
ムルモだった。

 
 リルムは、ムルモに先程のことを話した。

 「そうだったんでしゅか・・・。僕も松竹しゃんにいきなり出てけって言われたでしゅ・・・。僕は何も悪いことしてないのに・・・」

 「まあ、ムルモ様も!?」
リルムは驚いてムルモを見つめた。そして考えた。――これも、偽物の仕業じゃないかと。リルムは思い切って聞いてみた。

 「―ムルモ様。私、さっき松竹様の家へ行って、聞きましたわよね?」

 「ほえ?そうだったんでしゅか。僕、お兄たまのとこに行ってたから知らないでしゅ」

 ――やっぱり!リルムは確信した。リルムが結木に追い出されたのも、ムルモが追い出されたのも、全ては、自分達の知らないところで動いている偽物達のせいだと。

 「―ムルモ様。今から私が言うことをしっかり聞いてくださいませ」

 「なんでしゅか?」
リルムはムルモにこそっと言った――。

            *

 「――ここですわ」
偽リルムは、自分達を作り出した謎の妖精を、今度は安純の家に案内していた。

 「ここが、ミルモと南楓が特に関係をもっている最後のパートナーか」
妖精と偽リルムは、安純の家を窓から除く。

 「ヤシチ!お風呂洗いしておいてよね!」
部屋に安純の声が響く。

 「えっ!?い、今部屋の掃除をすませたばっかりなのに・・・」

 「問答無用!早く終わらせなさい!」
安純の一喝で、ヤシチはすぐにおとなしくなる。そして安純は部屋を出ていった。それを見届けてからヤシチはため息をつく。そしてせっせとお風呂洗いをして、そのままヤシチは外に出る。


 「・・・・・・」
その様子を見ていた妖精は、また手から黒い波動を出して、今度はヤシチをつくりだした。

 「よろしくね」
そう言って、妖精は、偽リルムを連れて、どこかへ消えたのだった―。


■ きらりん (75回/2012/11/26(Mon) 17:51:18/No4978)

 続きです。あまりにも6話が短すぎたので追加しようと思います。まだ6話ですよー☆

 「ほぇぇっ!?僕達の偽物がいる!?」

 「しっ!声が大きいですわムルモ様!」
リルムは慌ててムルモの口をふさいだ。

 「・・・でもそれなら、松竹しゃんが僕に出てけ、って言った理由、ちょっとだけわかる気がするでしゅ。きっとその偽物の僕が変なことしたんでしゅね」
ムルモは納得したというように頷いている。

 「私もですわ。結木様の本をどこかにやってしまったのは、偽物の私だと思うんですの」

 「でも一体誰がなんのためにそんなこと、やったんでしゅかね・・・」


 ―この会話を聞いている者がいた。――謎の妖精だ・・・。

 「・・・リルム、ムルモ」
謎の妖精は、一通り役目を終えた偽ムルモも引き連れて、言った。

 「そろそろ南楓を除く人間達に黒魔法をかけてやってくれないか?憎む心が少しでもあったなら、黒魔法で、それを倍増させることができる。――俺は頃合を見計らって、ミルモと南楓に接近する」

 「はいですわ」

 「でしゅ〜」
偽リルム、偽ムルモが怪しく笑った。そして謎の妖精も、その場から去った。―そんなことに全く気づかないリルム達は。

 「やっぱり、ミルモ様に相談した方がいいかもしれませんわ」

 「でも、もしお兄たまと楓しゃんが僕達のようになってしまってたら・・・」
ムルモの言葉で、リルムは、隠していた不安が、隠せなくなった。

 「まさかそんな――」

 「お〜い!」
リルムが言った時、後ろからまた声が聞こえてきた。

 「・・・!ミルモ様!」

 「噂をすれば、でしゅ」
ムルモが言った時、リルムは飛び出していた。

 「ミルモ様!ミルモ様!会いたかったですわ!」
リルムは泣きながらミルモに抱きついたのだ。

 「今日もあったじゃねーか!・・・それにムルモも!どーしたんだよ2人して」
ミルモは首をかしげた。その後ろから楓がやってくる。

 「ミルモーっ!待ってよ・・・って、あれ?リルムちゃんにムルモちゃん!?何かあったの?こんな時間に!」
・・・そう、今はもう夕方の7時ごろだ。ぶっちゃけ1話から1日もたっていないのだ。

 「楓様・・・」

 「楓しゃん・・・」
リルムだけでなくムルモも涙目になる。

 「2人とも本当にどうしたの?・・・よかったら家来ない?」

 「・・・はい」

 「・・・でしゅ」
リルムとムルモは、楓の家に行くことにした。



■ きらりん (76回/2012/11/26(Mon) 17:55:25/No4979)

 すいません。1話の訂正で、楓のセリフが、「ありがあとう」なんて言っているところがありますが、「ありがとう」でお願いします。何回もすいません。


■ きらりん (78回/2012/11/27(Tue) 13:43:12/No4981)

 訂正お願いします。5話で、泣き崩れたのはムルモでなく松竹です。本当に訂正多くてすみません。


■ きらりん (80回/2012/12/01(Sat) 22:50:45/No4988)

 第7話「謎の妖精」

 その後、リルムとムルモは、ミルモ達に、今までのことを話した。

 「そんな・・・。じゃあ、結木くんも、松竹くんも、誤解してるってこと!?」
楓が悲痛な声を上げる。

 「私が違うと言っても、結木様は聞く耳をもたれませんでしたわ・・・」
リルムが俯いた。

 「まあ好きな本がなくなったんだからな・・・。結木も気がたってたんだろ」
リルムを見てミルモは考え込むように言う。

 「僕も、松竹しゃんに何がなんだかわからないまま出てけって言われたでしゅ・・・」

 「ムルモちゃんは、何で松竹くんが怒ってるのかわからないんだよね?たとえば大事なものをどこかにやってしまったとか・・・」

 「はいでしゅ・・・。特に部屋とか変わった様子もなかったでしゅよ・・・」

 「・・・ま、明日くらいになったら怒りもおさまってんだろ。それくらいで根にもつなんて男としてカッコ悪いしな」
ミルモが促す。

 「ミルモだって、チョコがないと結構根にもってたりするよ」
楓がぼそっと呟く。

 「・・・・・・とにかく。問題はその偽物だ偽物!」
ミルモが話題を切り替えようと言葉を濁す。

 「そうでしゅ!リルムしゃんは今日松竹しゃん家に来て、僕にも会ったって行ってましゅけど、僕は楓しゃん家にいたからリルムしゃんには会ってなかったでしゅ!」

 「とにかく、その偽物を早く捕まえて、どういうつもりなのか聞き出さないといけませんわね!」

 「私は明日、結木くんと松竹くんの家に行って、誤解といてもらえるようにする!このままじゃいけないもの!」
ムルモ、リルム、楓は意気込んだ。

 「えいえいおー!!」


 「・・・・・・」
南家の窓際。声をかけあう楓達、そしてミルモを見つめる者がいた。

 (少し厄介なことになったな・・・。ボスに連絡するか・・・。)
偽リルム、偽ムルモ、偽ヤシチを作り出した妖精だ。そんな中、ミルモがこちらを向いた。

 (――!?まずい!)
足早に、その妖精は立ち去った。その様子を一部始終見ていたミルモは・・・。

 (何だあいつ・・・)

            *

 偽ヤシチが、本物のヤシチが外に出たところを見計らい、日高家に入っていく。するといきなり偽ヤシチは魔法を使ったのだ。

 「ヤシチでポン!」
せっかくヤシチが掃除してきれいにしたものが巻き戻しされていく。ゴミ箱が倒れ、中のゴミが飛び出し、埃が巻き上がる。お風呂場も、埃だらけにしていく。干していた洗濯物も、バサッと地面に落とす。役目を果たした偽ヤシチは、うちわを出してどこかに飛んでいってしまった。


■ きらりん (81回/2012/12/02(Sun) 23:15:50/No4992)

 また短すぎたので7話の続きいきます!

 そして本物のヤシチは、パンティーをじっくり観察してから戻ってきた。

 「今日もいい物件が入ったな・・・。この調子で明日も・・・ぶふぉぉぉぉぉぉ!!」
ヤシチは驚いた。なんと、なんと洗った洗濯物が、下に落ちているではないか。

 「な・・・っ、何があったのだ!拙者がいぬ間に!!」
ヤシチは慌てて家の中に入る。

 「・・・!な、なぜだ!拙者が、綺麗に洗ったところが埃まみれではないか!!」
ヤシチはお風呂場も覗いてみる。

 「ふ、風呂場にも汚れが!拙者はしっかりやったのに!!」
驚いているヤシチをよそに、外から、安純の声が聞こえる。運悪く帰ってきてしまったのだ。

 「ただいま〜!ヤシチ、掃除は・・・・・・って、何よこれええええええええ!!」
早速安純は洗濯物の現状に気づいたようだ。中からでも安純が怒って髪の毛が動いているのが見える。

 「ひえええええ・・・。安純が・・・安純が・・・!」
ヤシチは慌てて隠れようとするが、入ってきた安純に捕まってしまう。
 
 時間がないので一旦切ります。


■ きらりん (82回/2012/12/03(Mon) 22:48:01/No4993)

 まだ短いので7話の続きです。

 「ヤ〜シ〜チ〜!私あれほど言ったわよね!?掃除しえおいてって!それなのに・・・何なのよあの有り様は!」
安純は洗濯物のことを言っているのであろう。ヤシチでも想像はつく。

 「せ、拙者はちゃんとやったのだ!そしたら拙者が少しの間いなかっただけで、帰ってきたらこうなって――」

 「問答無用!!」

 「あべし!」
必死に弁解するヤシチだが、こちらも聞く耳をもたなかった。安純は自室に入り、そばにあったほうきでヤシチを壁に叩きつけた。

 「あ!ここも汚れてるじゃないの!罰として掃除全部し終わるまでかりんとう抜きよ!」

 「そんなぁ〜・・・」
怒った安純が部屋を出ていき、1人になったヤシチは、本日何回目だろう―とにかくため息をついたのだった。

 「おかしいな・・・」

             *

 一方南家。

 「リルムちゃん、ムルモちゃん。今日は家に泊まっていって。今のままじゃ家に帰りにくいでしょ」

 「・・・ありがとうございますわ楓様。ではお言葉に甘えて泊めさせていただきますわ」
リルムは楓に深々とおじぎする。

 「ありがとうでしゅ楓しゃん!今度お礼に最高級マシュマロプレゼントするでしゅ!」
ムルモも顔を明るくさせる。

 「今日だけだぞ〜」
ミルモはため息をついた。

 「お前らがいたら、俺はチョコが食えねーんだからな!」
ミルモは机の上にあるチョコをチラ見して言った。

 「ちょっとミルモ!リルムちゃんやムルモちゃんの身にもなってよ!何がなんだか分からずに、結木くんや松竹くんと喧嘩することになっちゃったんだからね!!」

 「わかってるって。あとは結木達と仲直りして、偽物を見つけりゃそれでいいじゃねーか」

 「仲直りできるといいんだけど・・・。私、明日説得してみるよ!」

 「ありがとうですわ!」

 「ありがとうでしゅ」
リルムとムルモが喜ぶよそで、ミルモは一見余裕ぶっているが、先程の―窓から覗いていた黒の衣装に身を包んだ妖精が、実のところ気になっていたのだ。

 「・・・・・・?」
ミルモがじっくり考えていたら、後ろからリルムの、ミルモ様、と言う声がかかる。

 「なんだよ」
ミルモが振り向くと、そこには、なんともおぞましい物体―もとい、リルムの手料理があった。その料理は、時々、「ゲシャアアア」という叫び声まであげている。

 「せっかく楓様の家に泊めていただけるのですから、これくらいはしませんと」
いつ作ったのだろうか。それはわからないが、ひとつミルモにわかること。それは、このままだと自分はこのおぞましい食べ物を食べる羽目になることだ。逃げないといけない。そう思うのだが、足がすくんで動けない。

 「そうですわ私ったら!忘れるところでしたわ!泊めていただいている楓様に料理をだし忘れるなんて!」
リルムは慌てた。今まで余裕ぶっていた楓は、え、と顔をひきつらせる。

 「楓様もどうぞ。・・・あ、ついでにムルモ様もいただいてくださいですわ!」
楓とムルモは、リルムのつくったおぞましい食べ物に背筋を震わせた。

 「・・・わっ、私はもう晩ごはん食べたし、お腹すいてないからいいや!」

 「ぼ、僕も今は食べる気分じゃないのでしゅ!またいつかいただくでしゅよ!」

 「・・・まあ。そうなんですか。それではまた後日食べてもらうということに・・・」
楓とムルモは、今その場で考えた必死のリルムの料理逃れ法で、何とか食べる羽目にならずにすんだ。・・・だが、後日食べると言うのも嫌な話だ。

 「・・・さてミルモ様。ミルモ様は食べてくださいますわよね?」
リルムが、叫び声を上げる食べ物を持ってミルモに近寄ってくる。

 「た、頼むから近寄るな!」
ミルモは近づいてくるおぞましい物体から逃げるように後ずさる。

 「まあミルモ様まで。いいんですわよ?遠慮なんかされなくても」
リルムは純粋な笑顔で、ミルモにおぞましい食べ物を近づける。

 「誰が遠慮なんかするか!」
ミルモがさらに後ずさった時―、ミルモは、もう後ずさるはばがないことに気づいた。

 「それなら食べてくださいますわよね?どりゃっ!」
リルムはそのまま無理やりミルモの口におぞましい食べ物を押し込んだのである。

 「ぎょええええええええ!」
ミルモは悲鳴をあげてそのまま倒れた。

 「あ、あら!?ミルモ様!?どうしたんですの?ミルモ様っ!」
リルムが心配してミルモに駆け寄る。

 「・・・・・・」
それを見ていた楓とムルモは、ただ顔をひきつらせて黙っていた。リルムに悪気がないことはわかる。・・・ただその作る料理が問題なだけで。

 「・・・本日をもってお兄たまはご臨終してしまったので、次回からは僕が主人公でしゅ!」

 「まだ死んでねぇーっ!」
ぶりっこするムルモの言葉を聞いて、倒れていたミルモは起き上がる。

 「あ、なんだお兄たま。生きてたんでしゅか」

 「当たり前だろ!」
ミルモのツッコミが飛んだ。リルムは、ミルモが起き上がったのを見て喜んだ。チッと舌打ちするムルモ。またそれを見て、あはははは、と声をあげて笑う楓がいた。

 そんなささやかな平和でさえも、崩れゆくことになるなんて、まだ誰も、思わなかった。

 ――いや、一人を除いて。

 その少女は歩いていた。靴音をたてて・・・。

 「あのパートナーに、かけるしかないわ・・・」
少女は、意味深なことを呟く。その少女が向かう先――それは、楓の家だった。

















■ きらりん (83回/2012/12/07(Fri) 20:54:37/No4995)

 第7話「憎しみの心」

 次の日・・・。窓から入る、いつもよりやけに眩しく感じる光が、結木の顔を照らす。

 「・・・・・・」
眩しくてつい顔を手で覆う。そして結木は心の中で呟いた。

 ――昨日はリルムに言いすぎたかな――

そう思うけれど、大事にしていた本をリルムにどこかに飛ばされてしまった―つまり、捨てられたのだ。本が大好きな結木にとって、本来それは許し難いこと。結木はリルムと本とを、天秤にかけていた。――そして結木は、リルムの偽物がいるかもしれないという話を本を捨てられたすっかり忘れてしまっている。本を捨てたリルムはまさしく偽物だと、気づいていないのだ。

 「・・・とりあえず、何か食べるか」
結木は、立ち上がってリビングに向かおうとしたその時だ。

 「――結木摂」

 「っ!?」
声がした方を振り向けば、そこには、黒い衣装に身を包んだ妖精がいたのだ。

 「・・・な、なんだ?妖精・・・?」

 「・・・少しだが、憎しみの心をもっているな」

 「・・・え?」
妖精に言われて、結木は少しどきっとした。

 「――まあそのほうが、やりやすくていいんだが―」
言うと、妖精は手から黒い塊を出す。

 「!!?」
逃げなければ。そう本能が感じ取った。――だけど、足がすくんで動けない。

 (何で・・・動かないんだ!)
結木は、イライラと恐怖が混じって、わけがわからなくなりそうだ。

 そうしているうちに妖精は結木に黒い塊をぶつける。そしてあっという間に、大きくなった黒い塊は結木に入っていくように結木を取り囲む。

 「!?うわああああああああああああ!」

 「・・・この黒魔法は、憎悪の念をもっている人間ほどよくかかりやすい。―そして、自分では絶対にとくことができないんだからな――」
叫び声をあげる結木を横目に、妖精は呟いて去っていった――。 

 「うわ・・・ああ、ウ・・・グァァァァァァァァァ!」
もう結木に意識はなかった。自分でも信じられないくらいの声をあげていた。黒い、モヤモヤしたものが、結木の体の中に入っていった――。

             *

 「坊ちゃま!昨日から元気がないようですが、どうされたのですか坊ちゃま!」
松竹家の朝。平井が、ため息をついている松竹の顔を覗きこんでオロオロしている。

 「何でもないよ平井・・・。そっとしてて・・・」

 「坊ちゃま・・・」
松竹は明らかに元気がない。妖精の見えない平井には、その原因などわからなかった。

 (もしや・・・。まだ南様にふられたのがこたえているのかもしれない・・・。今は坊ちゃまをそっとしておこう)
こう考えることしかできなかった・・・。

 「わかりました坊ちゃま。この平井、そっとさせていただきます」
平井は頭を下げると、そのまま部屋を出ていった。

 「・・・・・・」
1人で使うには広すぎる部屋で、松竹は考えていた。

 (どうしてムルモはあんなことしたんだろう・・・。この前みたいに僕が遊んであげてないこともないはずだ・・・)
松竹は顔を伏せる。 

 (・・・でも、もしかしたら最近ずっと南さんのことしか考えてなかったから・・・。だから、ムルモは・・・。・・・僕も言いすぎたのかな。でも、あそこおまですることなかったんじゃないか――)
いったん思い直そうとするが、少しムルモを許そうと考えていたが、やはりムルモへの怒りはまだおさまらない。松竹も、本当は楓の写真を捨てたムルモは偽物だということに気づいていないだけなのだ――。

 「―やっぱりおさまってなかったな。よし、これならいける」

 「っ!だ、誰!?」
窓から現れた侵入者―先程結木の家に来た妖精に、松竹は目を見開いた。

 「揃いも揃ってバカな奴らだ。騙されてるとも知らないで。まあこの調子だと最後の1人も簡単にできるか」

 「・・・!?な、何を言ってるんだ・・・?」
妖精の言っていることは松竹にはさっぱりわからない。

 「そうと決まったらさっさと用事すませるか」
言うと同時に妖精はまた手から黒い塊を生み出した。

 「う、わぁっ!な、何だあれ!」
松竹が叫んだ時には、すでに黒い塊が松竹に及び始めていた―!

 「た、助けてえええええええ!ムル・・・」
ビュウウウウウウ!松竹はムルモに助けを求めたが、当然来てくれることもなく。松竹は黒い渦に飲み込まれていく。

 (僕が・・・悪かったよ・・・。ごめんムルモ・・・)
松竹は、意識が途切れる直前に心の中で呟いた。黒い塊が自分の中へ入ってくるのがわかる。

 「ぐっ・・・・ウがあアあアアあアア!!」

 
 「・・・実に愚かだ。自分のパートナーも信じられないとは・・・」
叫ぶ松竹を、どこか悲しそうに見ながら呟いて、そのまま去っていった・・・。

            *

 「よしっ!まずは結木くんの家に行くわよ!」
楓は朝早くに起きて、準備をすませていた。

 「楓様・・・。結木様は、大丈夫でしょうか・・・」
リルムが俯いて悲しげに言った。

 「大丈夫だよ!結木くんだって、話せばわかってくれるよ!もちろん松竹くんもね!」
楓はリルムとムルモに心配させまいと、明るく言った。

 「楓様・・・」

 「・・・そうでしゅよね!」
リルムとムルモはそれを聞いて、顔に明るみが戻る。

 「そうと決まったらさっさと行こうぜ!あの2人だって怒ってねーだろ」
ミルモを先頭に、楓達は部屋を出る。

 「あら楓ー?どこに行くの?」
皿洗いをしている楓の母が不思議に思って尋ねてくる。

 「ちょっと散歩!」

 「気をつけるのよー」

 「はーい!」
楓は、後ろで聞こえる楓の母の声に返事して、ミルモを頭に、リルム、ムルモを両肩に乗せ、結木の家へ向かった――。




■ きらりん (84回/2012/12/07(Fri) 20:57:29/No4996)

 すいません。早速間違えました。「憎しみの心」は第8話です。訂正お願いします。本当にすいません。


■ きらりん (85回/2012/12/08(Sat) 20:46:37/No4997)

 また訂正お願いします。第8話の松竹くんの心の中の台詞、

 (あそこおまですることなかったんじゃないか――)
とありますが、「あそこお」の部分の「お」を消しておいてください。誤字とかがほぼ毎回ですいません。


■ きらりん (86回/2012/12/08(Sat) 23:27:38/No4998)

 第9話「豹変」

 ミルモ達は楓の肩に乗って結木が住んでいるマンションに着いた。楓はインターホンを押す。

―が、結木は出てこない。

 「あれえ?結木くん留守かなあ・・・」
楓は首をかしげる。

 「・・・やっぱり、結木様は、私のことを許してくれてないのですわ・・・」
リルムが顔を伏せた。

 「んなわけねーだろ!結木だってそんな器の小せー男じゃねーよ!」
ミルモは励ますように言った。

 「そうでしゅ!結木しゃんは少なくともお兄たまよりは器は大きいでしゅよ!」

 「どういう意味だよムルモ!」
ミルモがムッとしてムルモにつっかかる。

 「もうミルモ!」
楓が注意した時、ドアがギギィ・・・と開く。

 「!結木・・・く・・・ん?」
楓は結木が出てきたのを見て顔を明るくさせるが、結木の様子がどこかおかしいことに気がついた。結木は虚ろな目をしている。

 「結木ぃ〜。まだ怒ってんのか〜?」
ミルモがやれやれというふうに結木に近づいた―途端。

 結木がミルモの体を急につかみ、そしてミルモを床に叩きつけたのだ。

 「うわっ!」

 「ミルモ!」

 「ミルモ様!」

 「お兄たま!」
3人は心配してミルモに駆け寄る。

 「・・・結木くん!そんなに怒ってるの!?ミルモにまで八つ当たりするなんて・・・」

 「いくらなんでもひどいでしゅ!」
楓とムルモは結木の目を見つめるが、結木の表情は変化しない。

 「・・・っ、結木様!私が憎いなら、私だけにしてくださいませ!ミルモ様達には危害を加えないでほしいですわ!!」
起き上がれないミルモを見て―よほど強く叩きつけられたのだろうか――リルムは目に涙を浮かべながら言った。悲しかった。悲しかった。関係の無い者にまで八つ当たりするくらい、結木はそこまで自分を憎んでいたのかと。

 すると、結木は何も言わず、リルムを持って、どこかに行こうとする。

 「!?結木くんやめて!!」
楓は結木を追いかけて、リルムを取り戻そうとする。しかし結木は、楓をも地面に叩きつけるように押した。

 「きゃっ!」

 「楓!」

 「楓しゃん!」

 「楓様・・・!」
リルムは自分のせいだ―と思った。溢れ出る涙が止まらない。

 「ムルモでポン!」
ムルモは小太鼓を出してリルムを取り返そうとして、結木をグルグル巻きにしようと縄を出すが、結木の手1つで、縄が消滅してしまったのだ。

 「!?」

 (・・・ど、どうなってるでしゅか・・・!魔法が・・・!)
ムルモは目を見開いた。

 「ミルモでポン!」
今度はミルモが、ムチを出して結木の頭を叩こうとするが、またしても結木の手1つで、消滅してしまう。

 「くっそ〜!なんでだ〜!?」
ミルモが悔しそうに地団駄しているが、結木はそのままリルムを連れてってしまう。
 「リルムしゃーん!」

 「リルムちゃーん!」

 「リルムーー!」
ミルモ達の叫びは虚しく響くだけ。結木は姿を消したのだ。

 「結木くん・・・。どうして・・・っ、こんなこと・・・!!・・・ごめんね・・・。リルムちゃん・・・」

 「・・・あの結木しゃん、別人みたいでしゅ・・・。あれじゃあお兄たまより器が小さくなってましゅよ・・・。魔法もきかないなんて・・・。リルムしゃんは、結木しゃんに連れてかれて・・・。もしかして、松竹しゃんも・・・」

 「とにかく、リルムを探――」
ミルモが言いかけた時だ。

 「――僕は、嫌でしゅ・・・。松竹しゃあああん!」
ムルモは泣きながら飛び立って行った。松竹の家へ向かうつもりだ。

 「ムルモ!?今行ったらお前もあぶねーぞ!」

 「そうだよ!もしかしたら松竹くんもこんなことになってるかもしれないんだよ!?」
ミルモと楓が呼び止めるが、ムルモは無視して、ただ飛んでいた。

 (松竹しゃんは結木しゃんみたいにはなってないでしゅよね!!?僕のこと、許してくれましゅよね!?)
ムルモはそう思いながら、松竹家へ向かう。

            *

 「仕方ねぇ!ムルモを追うぞ!」

 「うん!」
ミルモと楓もまた、ムルモを追って松竹家へ向かうのだった――。

             *

 「松竹しゃん、松竹しゃん!」
ムルモは、松竹が、いつもの松竹だと信じて、窓から松竹の部屋に入る。松竹は、ムルモに背を向けて、立っていた。

 「松竹しゃん!僕が悪かったでしゅから・・・」
ムルモは松竹のすぐ後ろに来て、精一杯謝った。いつもの松竹だと信じて。

 
 ――それが盲点だったのだろう。松竹は部屋の窓を閉め、急に、振り向いたかと思うと、急にムルモを射抜くような眼差しで見たのだ。

 「!!」
それは冷や汗が出そうなほどの、冷たい目で。

 ムルモが驚いている間に松竹は、手から黒い塊を出した。――黒い衣装を着た妖精と同じものだ。松竹が出した黒い塊は、ムルモのもとへ向かってくる。ムルモは急いでそれをよける。

 「っ!な、何するでしゅか、松竹しゃ・・・!」
ムルモは言いかけて止まった。松竹には、感情が、表情がない。先程の結木と一緒だ。

 「松竹しゃん・・・。・・・どうして、こんなことに、なっちゃったんでしゅか・・・!」
ムルモは叫びながら、松竹が出してくる黒い塊をよけた。

            *

 「窓が開いてねぇ!これじゃすぐに部屋に入れねーじゃねーか!」

 「仕方ないよ。それより早く入れてもらおう」
松竹家に着いたミルモと楓が話していると、平井がやってきた。

 「!南様!もしや坊ちゃまと付き合う気になられたのですね!?」

 「え!?違・・・」

 「だったら入ってください!坊ちゃま喜ばれますよ!」
楓が弁解しても、平井は楓が松竹と付き合う気になったと勘違いして聞かない。

 (でも早く松竹くんの部屋に入らなくちゃいけないし。まあいっか!)

 「お邪魔します!」
楓はそう言って松竹家に入る。ミルモはうちわを用意して飛びながら松竹の部屋に向かう。

             *

 「も・・・もう、疲れた、でしゅ」
ムルモが息を整えている間に、どんどん松竹は黒い塊を出してくる。

 (外に逃げることもできないし・・・、らちがあかないでしゅ!こうなったら僕も魔法を使うでしゅよ!)

 「ムルモでポン!!」
ムルモは小太鼓を出して魔法の光を松竹に浴びせようとするが、松竹は、結木と同じように手を1本出すだけで、ムルモの魔法をいとも簡単に消してしまった。

 (!!消えた!やっぱりきかないでしゅ!)
ムルモが驚いている間にも、松竹は黒い塊をまた出してくる。

 ・・・ムルモはもう動けない。へとへとだ。松竹が出した黒い塊は、ムルモを取り囲む。

 「!ほええええ!!」
その時だ。バターン!音をたてて、ミルモと楓が入ってきた。

 「ムルモ!」

 「や・・・やだっ!何これ!松竹くんがムルモちゃんにこんなこと・・・!?」
ミルモと楓は驚いた。ムルモが黒い渦のようなものに囲まれているからだ。

 「ムルモ!・・・ミルモでポン!」
ミルモは魔法でムルモを囲む黒い渦を消し去ろうとするが――やはり消えない。

 「っ!!?」
その間にも、渦はどんどんでかくなって、ムルモの中に入っていこうとする。

 「ムルモ――っ!」
ミルモは悲痛な声をあげるが、ムルモはもう抵抗することすらもできない。松竹も、その渦の中に入っていく。

 「ムルモちゃん!ムルモちゃん!」
楓も声をあげることしかできなかった――。そして、渦に飲み込まれたムルモと一緒に入り込むようにして、松竹も渦と共に消えた。

 「ムルモーーーっ!」

 リルム、結木、ムルモ、松竹が消えた。













 




■ きらりん (87回/2012/12/11(Tue) 00:11:23/No5002)

 第10話「謎の少女」

 「ムルモちゃんまで・・・。いなくなっちゃったよ・・・。これからどうしたらいいの・・・?」

 もう松竹の部屋にはミルモと楓しか残っていなかった。

 「くよくよしてたってしかたねぇ!とにかく、ムルモ達を捜すぞ!」

 「ミルモ・・・」
楓は悟った。

 ―ミルモだってこたえたはずだ。リルム、そして弟のムルモまでもがさらわれてしまったのだから。もちろん楓だって心配だが。ただ、さらったのは変わってしまった結木や松竹だ。それでも、ミルモは一回も結木達のことで、結木達が悪い、などと文句を言わなかった。

 「――うん!!そうだよね!!」
意気込むようには言ってはみたが・・・。
 
 (・・・でも、どうして2人とも、別人みたいになってたんだろ・・・)
それでも、楓の中には、疑問が残る。そして2人は松竹家を出ようとした。

 「おや?南様。もう出て行かれるのですか?」
そこに、ちょうど通りかかった平井が声をかける。

 「・・・あ、はい。失礼しました」
楓はミルモと一緒に松竹家を出ていく。


 (坊ちゃまと付き合うことになられたのですね・・・!)
楓の後ろ姿を見ながら、平井は勝手に勘違いして涙ぐんでいた。その坊ちゃまがいなくなっているとも知らずに。

             *

 安純は、ヤシチを連れて買い物に出かけていた。

 「何ぃ!?本当か、安純!『春限定スペシャルウルトラかりんとう』を10袋も買ってくれるのか!?」
ヤシチはたらたらとヨダレを垂らしていた。そんなヤシチを見て安純は呆れるように言った。

 「まあ最近買ってやってなかったしね」

 「まあ拙者は昨日、いつもの2倍も掃除を頑張ったのだから、これくらい当然だわな。ははははは・・・」

 「あれはあんたの自業自得でしょ!?」
安純はもう聞き飽きた、とため息をつく。

 「だからあれはな、拙者が少し見ない間に、いつの間にか家全体が散らかっていたのだ!拙者はいつも通り真面目に掃除をやっただけだ!!」
一方信じてもらえないヤシチは不満そうに言うが・・・。

 「言い訳はいいから!そんなに言ってると、かりんとうナシにするからね!!」

 「ひぃぇぇぇぇぇ・・・!それだけはご勘弁くださいぃぃ!!」
安純の迫力に負け、ヤシチは安純の肩の上で土下座する。そうこうしている内に、スーパーに着いた。

 「・・・おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!並んでいる!『春限定スペシャルウルトラかりんとう』が!拙者が待ち望んでいた『春限定スペシャルウルトラかりんとう』が!今ここに、『ウルトラスペシャルかりんとう』が・・・「

 「うっさい!」
あまりにも連呼しまくっていたヤシチは、安純に叩かれる。

 「何回も言わなくていいわよ!しかも長いし!あんた最後順番おかしくなってたわよ!」
安純はツッコんでから、かりんとうを10袋ちょうど入ってきた時の右横にあったカゴに詰め込んだ。

 「おぉぉぉぉぉ・・・!!」

 「・・・感動しすぎじゃないの」
ヤシチは感動しているが、とりあえず無視してそのままかりんとう10袋を買って、スーパーを出た。

 
 「やった!やったぞ!いよいよこのかりんとうが、拙者のモノに・・・!」

 「それってそんなにおいしいの?私にはさっぱりわかんないわ」
あまりにも感動して、かりんとうの入った袋に頬を寄せているヤシチを安純は横目で見た。

 「もちろんだ!!かりんとうは、拙者が知る菓子の中で一番うまいと言ってもいい!!」

 「・・・そうかしら」
安純が、肩にヤシチを乗せて歩いていると、前方から楓が走ってくるのが目に入った。

 「・・・南さん!?」

 「ミルモ!」
飛んでくるミルモも見えたヤシチも驚いて声をあげた。

 「日高さん!」

 「どこかに行く途中?」

 「何かあったのか?」
安純とヤシチは尋ねた。

 「・・・最近ワルモ団が何かやったりしてなかったか?」
ミルモから返ってきた言葉は予想もしていない答えだった。

 「は?首領が?」

 「え!?どういうことミルモ!?」
楓も驚いて尋ねた。どうやら楓もなんのことかわからないらしい。ミルモは無視して話を続ける。
 
 「だから、ワルモ団がまた黒魔法を使ってなかったかってことだよ!」

 「・・・まあ、仮に知っていても貴様に教えてはやらんが・・・首領達がそんなことをするとは拙者は聞いていない」

 「・・・そうか。わかった」
ミルモは静かに答えると、あっけなく飛んで行ってしまった。

 「あ、待ってよミルモー!どういうこと!?」
楓が言いながら追いかけていく。それを見ながらヤシチは呟いた。

 「まさかまた首領達、くだらない作戦でも決行したのか・・・?」

 「ヤ〜シ〜チ〜!」

 「ひえっ!」
感じる禍々しいオーラに、ヤシチは後ろを振り向いた途端、鬼のような形相をした安純につかまれた。

 「また何か企んでるわけ!?あんたの仲間!」

 「せ、拙者は知らん!本当だ!」
ヤシチはかりんとうの袋を抱きしめながら言う。先程までは天国のようだったのに、一気に地獄に来たかのような心地だ。

 「・・・本当に?」

 「本当だ安純!・・・それより拙者としては、なぜミルモがそんなことを聞いてきたのか気になるのだが・・・」
ヤシチは自分の身を守るよう、慌てて少し話をそらした――。

            *

 「ねぇ。ワルモ団のしわざってどういうこと?黒魔法って?」
走りながら、楓はミルモに問うた。

 「・・・あくまで俺の考えなんだけどよ・・・。結木の時はわからなかったけど、多分―松竹が出した黒い渦――あれは多分黒魔法だと思うんだ」

 「・・・あぁ!そういえばワルモ団はいつか前、黒魔法の結晶で、この世界の人達を操ってたことがあったね!だからワルモ団のしわざって思ったのか・・・。ミルモにしては頭冴えてるんだね〜」
楓は納得したように言う。

 「・・・とにかく、アイツらがどこに行ったのかもわからねぇから捜しようがねぇんだよな〜・・・」
ミルモはため息をついた。

 「またワルモ団のしわざだとしたら――絶対に止めなきゃ!」


 「――それは違うわ」

 「!?」
ミルモと楓は、声がした方向に振り向いた。

 そこには、ミルモ達が昨日見た、寂しげな雰囲気の少女がいたのだ。

 「・・・あーっ!あなた昨日の!!」

 「何か知ってんのか?」
ミルモは自分が見えるはずはないと思っても、とりあえず呟いてみる。

 「・・・全部知ってる」

 「ええっ!?」

 「お前俺が見えんのか!?」
楓は少女が詳しいところまで知っているということに驚き、ミルモは自分が見えるということに驚いた――。


■ きらりん (88回/2012/12/11(Tue) 16:06:51/No5003)

 訂正お願いします。ヤシチの台詞で、

 「今ここに、『ウルトラスペシャルかりんとう』が・・・「

となっていますが、最後のかぎかっこを」にしておいてください。本当にすいません。


■ きらりん (89回/2012/12/11(Tue) 21:25:10/No5004)

 第11話「何もできない」

 「ミルモが何であんなこと聞いてきたか、ですって?そんなの、何かあったからじゃないの?」
安純が帰路へつきながら、ヤシチが言ったことを繰り返した。

 「何か・・・とは、何だろうな」
ヤシチは言いながら、少しだけ嫌な予感がした。

 「そんなの私が知るわけないでしょ!!」
安純はあくまで人事のように言う。だが、人事と思ってはいけないと思う時が、安純に近づいていた――。

 それが起こるのは、ちょうどヤシチと安純が、人気のない、裏通りにさしかかった時だった。


 「・・・あれ?私何でこんな道通ってるのかしら。行きにはなかったわよ、こんな道」
安純は首をかしげる。

 「道を間違えたのではないか?」

 「ううん。私確かに、行きと同じ道で帰ろうとしてたのよ!・・・私としたことが、迷っちゃったかもしれないわね・・・」
安純が下唇を噛んだその時だ。

 「・・・お前で最後だな」
安純とヤシチの前に、急に黒い衣装を包んだ妖精―結木と松竹を操った妖精が出てきたのだ。

 「・・・何よアンタ。新しい妖精?」

 「何者だお主?」
安純とヤシチが同時に尋ねた時――。

 妖精が再び手から黒い塊が飛び出して、安純を取り囲もうとする。

 「きゃっ!何よそれ!」
安純は慌ててそれをよける。

 「安純!ヤシチでポン!」
只者ではないと悟ったヤシチが、魔法を使うが、黒い塊に飲み込まれてしまう。妖精は余裕の笑みをこぼした。

 「・・・!?魔法が、きかない!?」

 「ちょっと!アレ何とかしなさいよ、ヤシチ!」
横から安純が言ってくる。

 「む、無理だ!!なぜか魔法がきかんのだ!」

 「え、え〜っ!?何よそれぇぇぇぇぇ〜っ!」
ヤシチと安純は慌てた。魔法がきかない。それは最大のピンチだと言えるからだ。それにここにはほかの妖精も、人間もいない。

 「ちょこまかと・・・っ!」
妖精は舌打ちして、黒い塊を出してヤシチ達を飲み込もうとする。

 「・・・だが、驚きだな。パートナーと険悪なムードになっていないとは・・・」
その妖精は、作戦が失敗したのにどこか嬉しそうである。

 「何のことだ?険悪なムード?」
ヤシチが黒い塊をよけながら首をかしげる。

 「ヤシチぃぃぃぃ〜っ!考えてる暇あったら何とかしなさいよぉぉ〜っ!」
安純が半泣きで黒い塊をよける。

 「だから魔法が使えんと言っているのだ!!」


 「・・・・・・でも喧嘩は多いようだな。だが、なぜだ?偽物のヤシチまで用意して、家を散らかし、パートナーに愛想をつかされ、すれ違ってしまうものかと思っていたが・・・」
妖精は2人を見てぼそぼそと呟く。

 「家を散らかし・・・?・・・そうか!昨日、拙者が掃除した安純の家があんなになっていた原因はお主だな!そのせいで拙者、二度も掃除をする羽目になったではないか!!」
ヤシチは怒りの矛先を妖精に向ける。それを聞いた安純が心底驚いたように問う。

 「・・・え?じゃあ、昨日の、本当にあんたじゃなかったっていうの!?」

 「やっと信じてくれたか安純!」
ヤシチは潔白が証明されて笑顔になる。

 「あんた・・・、私の家勝手に入って散らかしたのね〜!」
真実を知った安純は、髪の毛を逆立てて妖精にすごい剣幕で近づく。

 「っ!?(この女怖いな・・・)」
一瞬妖精は動揺するが、すぐに平静を保つ。

 「・・・どうだか。でもやったのはそこのヤシチだよ」

 「何!?やっぱりあんたなの!?」
安純は怒りの矛先をヤシチに変えようとする。ヤシチは肩を震わせた。

 「――ただし、偽物の、な」

 
2人は、妖精の言葉を聞いて唖然とした。

 「・・・どういうことなの。ヤシチの偽物がいるってこと?」

 「拙者の偽物おおお!?・・・最近は拙者、別に『妖精暗黒通販』とかは利用していない・・・。クローンができる道具も買ってなどないはずだ・・・」
ヤシチは一人で考え込んでしまった。

 「てかとにかく、逃げればい・・・きゃっ!」
安純は逃げようとするが、黒い塊が横切ったのが見えて、つい悲鳴をあげる。

 「そうはさせるかよ!言っとくけどな。お前で最後なんだよ。王子ミルモと南楓をとりまく仲間は!」

 「ミルモ・・・と南楓をとりまく・・・。最後・・・?ってことは、結木くんは!?あんた結木くんに何したのよ!?もし結木くんに何かしたら許さないんだからっ!」
安純は先ほどと同じくらいの剣幕で言うが・・・。

 「・・・ああ。結木、ね・・・。あいつは、たった一人のパートナーさえ信じることができず、黒魔法の餌食となった」

 「・・・!?黒魔法!?」
ヤシチと安純は同時に声を上げた。

 「黒魔法・・・。つまり、結木摂は、お前らが操っているということか?」

 「なんですって!結木くんを!?」

 「結木だけじゃない。松竹もだ。あいつも結木と同様、あっさり黒魔法にかかってくれた」

 「松竹くんも!?」
さすがに驚いて、安純もヤシチも目を見開く。

 「ってことでよ・・・。あと残る人間の仲間は、お前だけだ日高安純!!」

 「!?」
また妖精は黒い塊を出してくる。安純はよけようと思った―が、しかしよけれない。

 (なんで!?)
安純はついに黒い塊に囲まれてしまった。

 「安純!!」
ヤシチが焦ってトライアングルを出した。

 ――魔法がきかないとわかっていても、もう一回やれば、きくかもしれない。安純を助け出せるかもしれない。そんな思いからヤシチは、トライアングルをぎゅっと握り締めて言った。

 「ヤシチで――――ポン!!」
ヤシチの魔法の光は、安純を飲み込もうとする渦となった黒い塊に届いた。

 ―安純を助けたい!

 

 ・・・そんなヤシチの思いも虚しく、ヤシチが出した魔法は、黒い渦にかき消されてしまう。それと同時に、安純も黒い渦に飲み込まれる。

 「・・・くっ!安純!安純!」
ヤシチはあらん限りの声で叫び、そして安純に近づこうとする。

 「ヤ・・・シ、チ・・・」
安純の意識は途切れかけている。

 ―けれど、助けることができないのだ。助けたくても、魔法がきかなかったのだ。

 「・・・とりあえずいったん退散するか。」
その妖精は、黒い渦に飲み込まれた安純を見てから、その渦を消して、自分もどこかに行ってしまう。

 「!!安純・・・安純、安純ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ〜っ!」
ヤシチの必死に叫ぶ声も、今では憎たらしくも思えてくる、照った太陽が出ている青い空に虚しく響くだけだ。
 
 ヤシチは自分の魔力の非力さを嘆いた。

 ―こういう気持ちになったのはいつぶりだろう。ミルモに負けた時だっただろうか?けれど、この悔しさはそんなものではない。

 「パートナー1人、助けられないとは・・・」
ヤシチ出そうになる涙を必死でおさえこむ。

  
 「ヤシチ・・・?」
声が聞こえた。それはヤシチが先程聞いた声。自分のライバルである、ミルモの声だった。

 「ミルモ・・・!」
ヤシチは顔をあげた。


■ きらりん (90回/2012/12/11(Tue) 21:33:45/No5005)

 訂正お願いします。第11話で、「妖精が再び手から黒い塊が〜」とありますが、「妖精の手かた黒い塊が〜」にしておいてください。本当にスイマッセーン!!


■ きらりん (91回/2012/12/11(Tue) 22:42:34/No5006)

またしても訂正お願いします。「ヤシチ出そうになる涙を必死でおさえこむ。」とありますが、「ヤシチは出そうに・・・」というふうにお願いします。毎回毎回誤字脱字あってすいません。


■ きらりん (92回/2012/12/12(Wed) 14:50:12/No5007)

 第8話「憎しみの心」の初めの方の文で、「リルムの偽物がいるかもしれないという話を本を捨てられたすっかり忘れてしまっている。」というところの、「本を捨てられた」と「すっかり・・・」の間に、「悲しみで、」と入れておいてください。脱字あって本当に本当に本当にすみません。


■ きらりん (93回/2012/12/13(Thu) 17:30:26/No5009)

 第12話「無駄」

 「ミルモ・・・!お主、南楓と共に家に帰ったのではなかったのか?」
ヤシチの問いに、ミルモの横にいる楓が答える。

 「何か、嫌な予感がしたから・・・ってあれ?日高さんは?」
安純の姿がないことに気づいた楓は、辺りを見回した。

 「・・・!まさか・・・」
悟ったミルモはヤシチを見据えた。

 「・・・多分お主の予想通りだ。・・・安純は・・・、どこから来たのかも知れぬ妖精に、連れ去られたのだ・・・!!」

 「日高さんが・・・!!」
楓は驚いて声をあげた。

 (結木くんやリルムちゃん、ムルモちゃんや松竹くんに続いて日高さんまで・・・!)
楓は、泣きそうになる。自分の知っている人がどんどんいなくなってしまうのだから。

 「――ミルモがさっき言ってた、首領達が何かやってるかもしれないというのは、このことか?」
ワルモ団が使った黒魔法を、安純を連れ去った妖精も浸かっていた。ヤシチは尋ねた。

 「・・・いや、ワルモ団は今回何の関係もねぇらしい」
ミルモは静かに首を横に振る。

 「それは誰からの情報だ?」

 「さっき会った女からなんだけどよ―」

            *

 ミルモと楓は、少女に呆然としていた。

 「全部、知ってるってどういうこと?結木くん達が変わってしまった理由――知ってるの?」

 「うん」
興奮する楓に対して、少女は静かに答える。

 「――ある組織が、ある目的のためにしたことが原因よ」

 「ある組織!?」

 「やっぱりワルモ団なの!?」
2人は驚いて声をあげる。

 「違うわよ。――最近仲間の妖精から、偽物がいるかもしれないって聞かなかった?」

 「・・・!確かに聞いたけど・・・。やっぱりそれが原因なの?」

 「・・・ま、きっかけは妖精の偽物がつくったんだけどね・・・。でも人間にも非があると思うわ」

 「確かに根に持つのは男らしくねーよなー」
ミルモはふざけて答えたつもりだったが―。

 「・・・そうよ。偽物がしたことだとわかってなくても、パートナーを信じることができなかった人間達も最低最悪ね」
少女は声色一つ変えずに淡々と答える。
 
 「!?そんなことない!結木くん達のこと、何も知らないのにそんなこと言わないで!」
楓は仲間をバカにされたような気分になって、ついかっとなる。

 「楓!?」
さすがに驚いて、ミルモは楓を見た。

 「・・・・・・あなた達なら、大丈夫かもしれないかもしれないって思った私がバカだったって今は思ってる。私は最後の望みを託したけど・・・。それも無駄だったみたい。・・・最後に言っといてあげる。そろそろあなた達をとりまく最後の仲間が危なくなる頃だと思うわ」

 「最後の、仲間・・・?」
ミルモ達は言って悟った。

 ヤシチと安純のことではないかと。

 「仲間をこれ以上失いたくないなら、行ったらいい。――無駄だと思うけど」
そう言って、少女はどこかに歩いていって消えてしまった。

 「・・・とにかく急ぐぞ!」

 「うん!日高さん達が、危ないかもしれない!」
ミルモ達は急いで、ヤシチ達がいたところに戻る。

            *

 「本当に・・・無駄だった・・・。間に合わなかったよ・・・」
ミルモが一部始終ヤシチに話し終えた後、楓は改めて思ったことを呟いた。

 「・・・・・・」
ミルモは何も言えなかった。するとヤシチが口を開いた。

 「・・・・・・こうなった以上、癪だが、ミルモ、お主と手を組むしかないと思うのだ」
 
 「・・・えっ?」
ミルモは面食らった。ライバルの、しかもヤシチの方からそういうことを言うことは滅多にないからだ。

 「パートナーの安純もさらわれてしまった。・・・聞けばこれを行なっているのは首領達ではない。全くわけのわからん組織ならば・・・。魔法もきかないのだから、1人じゃ困難だと思うのだ。だから、組織を倒して安純を奪還するまでは、お主と組むしかない――」

 「・・・・・・わかったけど―。くれぐれも俺の邪魔になんじゃねーぞっ!」

 「ふん、貴様こそ拙者の邪魔になるようなら承知せんからな!」

 「誰がなるか!なるとしたらお前だろ!」

 「いや貴様だ!」

 「お前だ!」

 「貴様だ!」

 「お前だ!」

 「ちょっとやめてよ2人とも!」
言い争いになり喧嘩になるミルモ達を楓は慌てて止める。


 「・・・・・・拙者思ったのだが、やはりその女からもっと情報を聞くべきではないのか?拙者達はまだほとんどわかっていない。敵の正体も、目的も・・・」
ヤシチは考え込んだ。

 「・・・あのねヤシチ。結木くんや松竹くん、変わっちゃって、リルムちゃんやムルモちゃんを連れ去っちゃったの・・・」

 「それが何か問題あるのか?」
ヤシチには話だけきくとどこが問題なのかさっぱりわからない。

 「結木は俺達の使った魔法を簡単に消して、松竹は黒魔法を使ってムルモを渦に吸い込んで、自分もどっかに行っちまった・・・」
ヤシチの問いにミルモが答えた。

 「・・・明らかに変わっているな。・・・しかし、どういうことだ?結木達人間に、そんな力はあるのか?」

 「・・・本来人間はもってないはずだ・・・。」
ミルモはそこまで言って、はっとしたように言った。

 「・・・いや、多分その組織に操られたのかもしれねーな・・・」

 「・・・っ!?操られた!?」
楓とヤシチが同時に声をあげた。





■ きらりん (94回/2012/12/13(Thu) 17:32:44/No5010)

また訂正お願いします。12話で、「安純を連れ去った妖精も浸かっていた」とありますが、「浸かっていた」を「使っていた」にしておいてください。誤字とかばっかで本当にすみません・・・。(なるべく間違えないようにしたいんですけど・・・。)


■ きらりん (97回/2013/05/10(Fri) 23:38:15/No5292)

7話の続きの訂正お願いします。最初の安純のセリフで、「しておいて」が「しえおいて」になってました。すいません。




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